韓国中部(慶尚・忠清)の地方都市を巡る韓国乗り鉄・乗りバスの旅、2日目の続きです。安東市にある伝統的生活様式が保存された村、世界遺産「河回村」を訪れました。
路線バスで河回村へ
安東市と河回村について
朝鮮王朝の歴史の香る街、安東市は、慶州と並ぶ韓国を代表する古都として人気の観光都市。韓国最長河川の洛東江上流域にある自然豊かな美しい街で、慶尚北道の道庁所在地として地域の政治・経済の要としての役割も果たしている。
安東市中心市街地から西に約20kmの所に河回村がある。ここは豊山柳氏(安東市豊山地区を本貫とする韓国の氏族)が600年以上代々暮らしてきた韓国を代表する同姓村で、朝鮮王朝時代の「両班」の文化が色濃く残されている。その文化・学術的な価値が評価され、2010年にユネスコ世界文化遺産に登録された。
安東バスターミナルの様子
安東市の市内バスは46の路線があり、3つのバス事業者(安東バス、慶安旅客、東春旅客)により運行されている。バスは白とピンクの塗装が特徴で、観光路線である210系統には「トロリーバス」と称される特別装飾バスも運行されている(もちろん架線集電の電気バスではない)。
バスターミナルから河回村に行く路線は「トロリーバス」が走る210系統。市街中心部の南部洞(旧駅付近の教保生命前)から安東ターミナルを経由して河回村を結ぶ。運行間隔は概ね1時間に1本程度と本数はそれほど多くはない。
さて、大邱から乗ってきた高速バスを降りて、とりあえずは情報収集のためターミナルをウロウロ。何よりキャリーバッグをどこかに預けなければ観光もできない。
ターミナル内には有料ロッカーがあった。料金は6時間で小2,000ウォン、中3,000ウォン、大4,000ウォン。お金を先に投入してから空きのロッカーが開錠される仕組みなので、事前に自分の荷物が入るかどうか確認することができないのが難点。
荷物を預けて身軽になった所で、目的の河回村に行く市内バス乗り場を探す。バスターミナルの建物から出ると市内バス乗り場の案内表示があるが、英語表記は”BUS STOP”と書かれているだけなので、ハングルが読めないと何の意味なのかさっぱり分からないだろう。
上段の10mの矢印は豊山・道庁方面、下の80mの矢印は市内方面と書かれている。河回村行きバスは10mの方だ。
バス乗り場はターミナル建物のすぐ前にある。タクシー乗り場と一体になった大きな上家があり雨が降ってもしのぐことができる。
市内バス各路線の時刻表は掲示板にまとめて貼られていた。こちらもハングル表記オンリーなので外国人には分かりにくい。
210系統の時刻表もあるが、肝心のターミナル通過予定時刻の記載は無いので、起点の教保生命前の発車時刻から推測するしかない。現在時刻は13時少し前、起点を13:10に発車する便があり、その15~20分後の13:25~13:30頃にやってくると読んだ。
ターミナルを発車し各地に向かう高速バスを眺めながら待つ。
安東バスターミナルから河回村へ
13:28、読み通りに210系統のバスがやってきた。前乗り後ろ降り方式で、「T-money」などの乗車ICカードが利用できる。運賃は均一で、現金は1,500ウォン、ICカード利用では1,400ウォン。
ドア側最前列、いわゆる”バスオタシート”に着席。乗客は少なく、ほとんど地元の人と思われる。ちなみに韓国の道路は右側通行なので、バスのドア位置も日本とは逆で右側。
バスは片側2車線の高速道路の様な立派な道を走る。
途中のバス停は側道側にあるので、しばしば本線を離れて寄り道していく。それにしても、運転士は携帯電話で話しながら70km/h以上でガンガン飛ばし、停留所でも徐行しない。韓国のバスは全般的に運転が荒っぽいが、この安東の市内バスは韓国バスファンの中でも特に評判が悪いらしい。
しばらくして、立派な道(国道34号線)から降りて旧道へと入っていく。豊山邑の中心部で多くの乗客が入れ替わった。韓国の典型的な地方の町の風情が、日本人の私にもどこか懐かしく感じる。
河回村入口の駐車場に到着。ターミナルからの所要時間は約25分であった。ほとんどの乗客がここで降りたが、そのまま乗り続けている乗客もいる。バスは更に村の中心部まで入っていくが、そこまで乗車できるのは村の住民のみ。
立派なバス停標識があり、こちらは英語表記オンリー。ご丁寧に「トロリーバス」充当便の注記まであり、せっかくなので乗ってみたいが次の充当便は16:30発なのでちょっと遅い。なお、1日3便のみ近くにあるもう一つの世界遺産、屏山書院(朝鮮王朝時代の学校跡)を経由する。
土産物屋などが並ぶ道を5分ほど歩くと、入場券発売所に到着。ここで入場チケットを購入し、シャトルバスで村の入口まで移動する。一般人の入場料金は大人5,000ウォン。なお、シャトルバスの運賃はこの入場料金に含まれている。
シャトル用のバスは安東バスの一般路線タイプ。数台のバスでピストン輸送している様子。
シャトルバスは満員状態で発車し、約3分ほどで村の入口に着く。
河回村散策
村の周辺はのどかな田園地帯。水田と緑豊かな山々は日本の農村風景に似ている。
村に入ると先ほどターミナルから乗ってきたバスが折り返してやってきた。帰路は観光客を含め誰でも村の中心部にあるバス停から乗車することができるので便利だ。
村内は伝統的な家屋が残されている。観光地化され、村全体が民族テーマパークのようになっているが、住民は普通に暮らしており生活感のある生きた村だ。
土塀に囲まれた小径が迷路のように張り巡らされ、今どこにいるのか迷ってしまうほど。
伝統的な家屋も良好に保存されている。
観光客目当ての土産物屋もある。村の伝統文化である「河回別神グッ仮面舞」にちなみ、特徴的な仮面も工芸品として売られている。
村をぐるっと囲むように洛東江が流れている。対岸にある切り立った崖は「芙蓉台」と呼ばれ、頂上からは河回村が一望できるとのこと。
国家河川洛東江の河川標識。ちなみに河川の所管は日本では国土交通省だが、韓国では環境部(環境省)の管轄。
さて、1時間ほどの散策ののち、ターミナルに戻るために村中心部のバス停に向かう。ちょっとした広場になっており、周囲にはカフェや公衆トイレもある。
バス停には時刻表が掲げられているが、ハングル表記のみ。次の発車は15:45のようなのでしばらく待つことにする。
しかし、いくら待ってもバスは一向にやって来ない。ひどい渋滞でも発生しているのか、はたまたバスが故障し運休になってしまったのか。情報が無い中で不安になってきた。
そして、このあと思いもよらない衝撃?の事実が判明するのであった。
(④につづく)
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