【2019年12月】鉄道乗車記:昆明-河口 ベトナム国境への列車の旅

雲南省の省都昆明から、ベトナム国境の河口まで列車で移動しました。2019年12月現在、最高速度160km/hの動車組(電車)列車が最短3時間38分で結び大変便利になっています。

実際に乗車した時の車内の様子や車窓の紹介とともに、河口北駅から国境まで、路線バスでの移動についても詳しくお伝えします。

乗車データ

項目 列車
乗車区間 昆明-河口北
事業者 中国鉄路総公司
列車番号 C8338
車両形式 CR200J 
乗車時間 3時間45分
乗車クラス 二等座
運賃 100元

基本情報

概要

昆明市街中心部にある昆明駅から、ベトナム国境に近い紅河ハニ族イ族自治州の河口北駅まで、2019年12月現在、昆玉河線経由で1日5往復(日により4往復)の旅客列車が運転されている。

そのうち3往復(列車番号の頭に”C”)は、最新型の在来線用動車組、CR200J型電車による運行。河口北行きは最短3時間43分、昆明行きは最短3時間38分で結んでいる。残り2往復(列車番号の頭に”K”)は在来型客車による快速列車で、約6時間程度かかる。

運転時刻および運賃

表1-1 昆玉河線(昆明→河口北)列車時刻表(2020年1月現在)

駅名   C8334 C8338 K6134 K9828 C8342
昆明 8:00 11:17 13:16 15:02 18:15
昆明南 8:23 11:48 13:43 15:30 18:38
玉渓 9:04 14:35 16:37
通海 9:40 15:27 17:10
曲江 17:50
建水 10:36 13:18 16:29 18:56 20:31
蒙自 11:18 13:59 17:34 20:06 21:12
屏辺 11:50 18:14 20:43 21:44
河口北 12:27 15:00 19:26 21:50 22:23

表1-2 昆玉河線(河口北→昆明)列車時刻表(2020年1月現在)

駅名   C8332 K9826 C8336 K6132 C8340
河口北 8:10 9:00 13:00 14:05 18:12
屏辺 8:51 10:11 13:41 15:14
蒙自 9:23 10:51 14:24 16:00 19:17
建水 10:16 12:22 15:18 17:41 19:59
曲江 13:43
通海 14:15 15:56 18:54
玉渓 11:27 14:52 16:24 19:24
昆明南 12:10 15:53 17:06 20:49 21:31
昆明 12:29 16:16 17:25 21:12 21:50

乗車券は国鉄駅などの切符売り場で購入できるほか、予約サイト「Trip.com」を利用することにより日本から予約することも可能だ(数百円の手数料がかかる)。この場合も窓口でパスポートを呈示の上チケットを発券してもらう必要がある(これを”取票”という)。

表2 昆明・河口北間の列車運賃比較(片道大人普通運賃)(2019年12月現在)

種別 一等座 二等座 軟座 硬座
動車組(C) 160元 100元
快速(K) 86.5元 54.5元

なお、昆明と河口の間(昆明北駅-河口駅)には、昆玉河線とは別に、狭軌(レール幅1000mm)路線の”昆河線”が走っている。開業は1910年、こちらの方がはるかに歴史が古い。かつては、同線を通り国境を越えてハノイまで直通国際旅客列車が運転されていたが、現在は昆明市内の一部区間を除き貨物専用線となっている。

参考までに、手元にある1999年の時刻表によると、国際列車は週2往復の運転で、昆明北発14:55→ハノイ着翌20:15、ハノイ発21:30→昆明北着翌々7:25となっている。昆明北-河口間は毎日運転の快客列車(633次、634次)に併結されていた。

昆明駅へのアクセス

宿泊先最寄りの東風広場駅から、地下鉄で昆明駅に向かった。10:47、乗り換え駅の昆明火車站駅に到着。

地下鉄昆明火車站駅

これから乗るC8338列車は11:17発車。昨日の内に”取票”を済ませてあるので、国鉄駅に入りそのまま改札口に行くだけ。

国鉄駅への案内看板

時間的余裕は十分だと思ったのも束の間、地上に出た所に掲示があり、反対側の入口(北広場口)まで900m迂回せよとの指示が。。。

迂回指示掲示

荷物を引きずりながら指示された地下道に向かう。後で掲示の写真を確認してわかったが、どうやら北広場に向かうシャトルバス(摆渡车)があるようだ。

南広場口の駅舎は写真の通り閉まっていた。勝手の分からない旅行者にとってはまさに青天の霹靂。この状況は現地でも問題視されているようで、地下鉄2号線延伸開業時には解消される予定とのこと。

南広場口駅舎

地下鉄出口から3分ほど歩くと地下道入口に着く。よく目立つ案内サインがあるので迷うことはないだろう。

地下道入口

1~2分で地下道を抜ける。褐色の壁に囲まれた通路は、中世の城の中に迷い込んだような感じ。

地下道通過後の様子

車道に出て右折すると、ようやく北広場口の巨大な駅舎が姿を見せる。

北広場口駅舎

駅前広場を大きく回り込み、ようやく駅構内への入口に到着。地下鉄出口から12分ほどかかった。このように、現状では地下鉄による昆明駅へのアクセスはお勧めできない。

それにしても駅前は武装警察が見張っており非常に物々しい。2014年3月に当駅で34名が亡くなる無差別テロ事件が発生したが、その余波が今でも残っているのであろう。

駅舎正面
切符売場

乗車

さて、時刻は既に11:00を回った。発車時刻が迫ってきているので急いで改札口に向かう。

駅舎入口
駅舎内

エスカレーター2階に上がると出発コンコースに入る。発車案内標を見ると、C8338列車は改札が始まっていた。表示された6A检票口(改札口)に急ぐ。

発車案内標

改札口に着くと大行列ができている。外国人は有人ゲート(人工通道)を通らねばならないので、探しながら前に進む。

改札口
人工通道

読み取り機にパスポートをかざしてゲートを通過。時刻はもう11:06。発車時刻3分前には改札終了となるので、下手をすれば乗り遅れてしまうところであった。

乗り場は7番站台。階段を降りてホームに向かう。

ホーム降り口

明るい緑色の車体に黄色いラインが入った新型車両が停車していた。初めて見るCR200J型電車である。

7番站台
CR200J型

この形式は2019年1月にデビューしたばかりの新型。機関車牽引の客車列車で運転されていた在来線旅客列車の輸送効率化を目的として開発された車両である。

9両編成うち動力車は1両のみ。いわゆる”動力集中方式”が採用されている。車両の最高速度は160km/h。

車体標記

車内の様子

二等座車は7両。座席は3-2の横5列で、集団見合い式の固定クロスシート。車体中央はボックスシートになっており、この席だけ大きなテーブルが設置されている。

客室

シートはリクライニングシートで座り心地は悪くない。また、側面にはモバイル電源が設置されている。

シート
モバイル電源

一等座車は1両のみ。現物は確認していないが、2-2の横4列シートで、こちらも回転不可の固定式とのこと。

編成の中間には売店コーナーがある。弁当や飲料、菓子類などを販売。また、車内販売員による巡回販売も行われる。

車内販売の弁当

車窓

11:16、定刻より1分早く昆明発車。乗車率は8割程度か。

昆明発車

右手には広大な車両基地”昆明車両段”が見える。

昆明車両段

5分ほどで、これまた巨大な貨物駅、昆明東駅を通過する。中国では未だに鉄道貨物の”ヤード輸送”が行われており、丘の上から重力を使って貨車を転がして目的地別の線路に仕分けを行い、各方面への貨物列車を仕立てるための設備、”ハンプヤード”が現役である。

昆明東駅

列車は上海へ向かう滬昆線と別れて、昆明南連絡線を進む。

洛羊鎮駅通過

洛羊鎮を通過すると、滬昆高速線への連絡線を左に分ける。小さなトンネルを抜けると、オーバークロスした滬昆高速線の本線と車両基地線が姿を現す。

滬昆高速線への連絡線
並走する滬昆高速線

高架橋が右に左に幾重にも入り乱れる。非常に複雑な配線だ。

やがて列車は巨大な昆明南駅に吸い込まれる。

昆明南駅に到着

11:36、昆明南に到着。滬昆高速線、南昆客専線のターミナル駅だ。昆明からの所要時間は僅か20分。地下鉄を利用すると45分程度かかるので、国鉄のシャトル列車が走れば便利であろう。

昆明南駅ホーム

他線からの乗り継ぎ客であろうか、当駅からの乗車も多い。ほぼ満席となった。

11:47昆明南発車。列車は昆玉河線に入り、南西に針路を取る。

最高速度160km/h前後で快走する。揺れはほとんどなく乗り心地は極めて良好。

化城、晋寧東を通過。両駅ともホームはあるが、まだ旅客営業は開始されていない。

晋寧東駅通過

市街地を抜け農村地帯を進む。畑はほとんどがビニールハウス。何を作っているのだろうか。

畑の中を走る

しばらくすると、右手遠方には雲南省最大の湖、滇池(てんち)が見える。

滇池

分岐点の渠東線路所で昆陽に向かう連絡線(渠東連絡線)を分ける。すぐに昆陽からの連絡線(普家村連絡線)が近づき普家村線路所で合流。列車はそのまま玉渓に向かい南下する。

渠東連絡線
普家村連絡線

宝峰を通過するとトンネルが連続する山越え区間に入る。貨物線の昆玉線が並走するが、あちらは勾配をしのぐためにカーブが連続している。なお、トンネル区間は携帯電波は繋がらない。

宝峰-玉渓間

サミットを過ぎると左手には玉渓市街が一望できる。

12:21玉渓通過。運転上の要衝で当駅止まりの区間列車も運転されている。

玉渓駅通過

当駅で建設中の線路が分岐していく。雲南省最南部、シーサンパンナを経てラオスの首都ビエンチャンに向かう、中国・ラオス鉄道だ。

中国・ラオス鉄道を分岐

次の駅、玉渓南で貨物線の昆玉線と合流する。広い構内には多くの貨車が停車している。ここからは単線区間となる。

玉渓南駅通過

再び山越え区間となる。当線は新しい路線なので地形をものともせずにトンネルと橋梁で貫いていく。

通海を通過すると長いトンネルに入る。ここから紅河ハニ族イ族自治州となる。トンネルを抜けると右手には曲江鎮が一望できる。

柿花樹-曲江間

旅客列車が1日1往復のみ停車する曲江を通過。段々畑の美しい景色が続く。

曲江駅通過
曲江-李浩寨間

李浩寨で上り快速K9826と行き違い。HXD3C型電気機関車が牽引する客車列車だ。

李浩寨駅

トンネルでサミットを超え、広い盆地に出ると建水の町だ。

建水北駅通過

13:15、昆玉河線内最初の停車駅、建水に到着。駅は建水県の中心地、臨安鎮の中心部から北東に6km離れた場所に位置している。

当駅で2割程度の乗客が下車する。省都昆明を結ぶ最速の公共交通機関として沿線住民の重要な足となっている様子だ。

建水駅ホーム

なお、蒙自市の雨過舗駅と紅河県の宝秀駅を結ぶ、昆河線の支線、蒙宝線が臨安鎮の中心部を通っていたが、現在は一部区間を除き廃線となっている。

13:18定時発車。列車は沿線最大の都市、蒙自に向けて東に向かう。

しばらくすると、進行右手の山腹に蒙宝線の廃線跡が見えてくる。アーチ状のコンクリート橋が遺跡のようだ。

蒙自線廃線跡

1920年代に造られた蒙宝線は、起伏のある地形にできるだけ逆らわずに右へ左へとカーブが続くが、現代の鉄路は土木技術を駆使して地形を克服する。当然後者の方が建設時の環境負荷は大きいが、得られる効用も大きい。

何度か蒙宝線跡をオーバークロスする。廃線敷にはレールが残されており、線路敷もさほど荒れていない様子。国鉄管理用地として必要最低限の手入れがされているのかもしれない。

13:44、蒙自北通過。立派な駅舎とホームがあるが、現在は旅客列車の停車は無い。当駅から狭軌線(草官線・蒙宝線残存区間)の雨過舗駅まで貨物専用の連絡線(蒙自北連絡線)が分岐している。同線は1435mm標準軌と1000mm狭軌の三線軌条である。

車窓からは、「大屯海」と「長橋海」という名前の双子の大きな湖が見える。

大屯海
長い高架橋
長橋海

左手中腹には昆河線を走る貨物列車が見えた。同じ昆明と河口を結ぶ鉄路であるが、途中で両線が交差することは無い。

右手に蒙自市街の高層ビルが見えると、当線最大の駅、蒙自駅に到着する。13:55定刻だ。

蒙自市街を望む
蒙自駅到着

蒙自市は紅河ハニ族イ族自治州の州都。沿線最大の街らしく、半数以上の乗客が下車する。当駅から若干の乗車もあったが、乗車率は2割程度まで減ってしまった。

14:00、1分遅れで蒙自発車。終点河口北に向けてラストスパートとなる。列車はグングン高度を上げ山塊に突っ込んでいく。

このあたりは袋掛けされた果樹が多い。蒙自特産のザクロであろうか。

蒙自-朗敞寨間

朗敞寨で上りC8336列車と行き違い。あちらを停車させて最速列車は先を急ぐ。

朗敞寨駅通過

蒙自と河口北の間は半分以上がトンネル区間。サミットを過ぎるとひたすら下り勾配が続く。

車窓はあまり望めないが、時折現れる風景に目を奪われる。

蓮花灘駅通過
瑶山駅通過

速度が緩み、土地が開けてくると終点河口北は近い。

馬度白-河口北間

15:01、1分遅れで終点河口北に到着した。

河口北駅に進入
河口北駅到着

出口改札の読み取り機にパスポートをかざし、OKサインが出たら出場。すべての人の行動が国によって把握されているということだ。

駅出口
河口北駅舎

河口北駅-国境間の路線バス

河口北駅は国境付近にある河口鎮中心部から約5kmほど離れている。駅から国境付近まで、河口公交の路線バスが結んでいる。

バス乗り場は駅前広場右手にある。バスは4台ほど停車しており、正面には”2路 海関-火車站”と表示されている。

なお、バスの前にはタクシーの運転手がずらりと並んで、しつこく客引きを行っているので注意。

バス停ポールはあるが、時刻表は発見できなかった。

駅前バス乗り場
バス停ポール
バス

比較的空いている3台目のバスに乗車する。運賃は大人2元。ワンマンバスなので運転席横の運賃箱に現金を投入する。

運賃箱

15:11にバスが発車した。片側2車線の広い道路を走り、河口市街地へと入っていく。

河口市街中心部へ向かう

12分ほどで紅河(ホン川)の河畔にある終点停留所に到着した。立派な待合上家のあるバス停で、停留所名は「海関大楼」と表示されている。路線案内はなぜか”4路”のみで、時刻表の掲示も無かった。

ここから国境の橋は目と鼻の先。周辺は「口岸花園広場」という公園になっている。川の向こうはもうベトナム領内だ。

海関大楼停留所
バス停付近から国境の橋を望む
対岸のベトナム領

バス停から徒歩2~3分で中国側の口岸(出入国管理所)に着く。このまま出国する前に、見ておきたい場所がある。

河口口岸

昆河線河口駅の様子

口岸から北に5分ほど歩くと、昆河線の河口駅に行くことができる。途中には河口駅からベトナム・ラオカイ駅に向かう線路の踏切がある。

南渓河(ナムティー川)を渡る国境の鉄道橋は門で閉ざされているが、レールは光っているので定期的に列車が通過していることがわかる。国際旅客列車が廃止された現在でも、貨物輸送は行われている。

国境の鉄道橋
河口駅進站(場内)信号機
鉄橋の説明板

河口駅前の道路は洒落たカフェやレストランが並んでいる。

駅前通り

河口駅舎は改装され美しく整備されている。正面には着工年を示す”1903”の文字が。駅前広場にはホテルもあり、人通りもそれなりにある。

河口駅舎

なお、先ほど降り立った河口北駅から当駅までは、貨物専用の連絡線(河口北連絡線)が伸びている。両駅を結ぶシャトル列車があれば嬉しいのだが。

再び口岸に戻る。さすが国境の街、交易物資が大量に列をなしている。

交易物資

中国側の出国審査を済ませると国境の橋を渡る。写真でよく見るアーチがかかっている。

国境の橋

先ほど見た鉄道橋が平行している。残念ながら列車の通過を見ることはできなかった。

鉄道橋
ベトナムに入国

感想

今回初めて乗車したCR200J型。中国国鉄在来線近代化のホープとして登場した電車だが、期待通りの良い車両であると感じた。

なにより車内の静粛性と乗り心地が非常に良いのが印象的。これは動力集中方式の利点であろう。

また、高速化で便利になった昆玉河線であるが、今後乗客が増加してくると輸送力不足で切符が手に入りにくくなるかもしれない。全車動車組化の上、列車の増発を期待したい。

河口側のアクセスは要改善であろう。何より列車に連絡する路線バスが分かりにくいのが難点。駅から国境行きのバスは列車の到着に合わせて発車するのであろうが、国境から駅に向かうバスが一体何時に発車するのかは分からなかった。もし利用する場合は、とりあえずバス停に行って運転手に聞いてみるしかないかもしれない。

なお、狭軌の昆河線は現在貨物専用線となっているが、非常に景色の良い所を走ると聞いている。産業遺産として観光資源化することも構想されているようなので、再旅客化を期待したい。

鉄道コム

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