【2019年2月】バス乗車記:丹後海陸交通(丹海バス)上限200円バスの旅

海が見える路線バスシリーズ第1弾。地方公共交通活性化の先進地、「海の京都」丹後半島を、鉄道と路線バスを乗り継ぎ旅をしました。その2として、天橋立駅から「上限200円バス」で丹後半島ぐるっと一周した時の様子をお伝えします。

(その1 京都丹後鉄道)

【2019年2月】鉄道乗車記:京都丹後鉄道宮福線の旅

乗車したバス
路線 区間 所要 事業者
経ヶ岬線(路線番号9) 天橋立駅→中浜 1時間48分 丹後海陸交通
丹後峰山線(路線番号47) 中浜海ノ家前→間人 30分 丹後海陸交通
海岸線(路線番号45) 間人→網野駅 30分 丹後海陸交通
はじめに

天橋立駅から、路線バス「上限200円バス」で丹後半島に向かう。

この「上限200円バス」は、2006年度から京丹後市において取り組みが始まり、2013年度には隣接する宮津市、与謝野町、伊根町を加えた4市町ほか関係組織により「丹後地域路線バス利便性向上協議会」が立ち上げられ、法に基づく地域公共交通総合連携計画として「丹後地域路線バス利便性向上連携計画」を策定、これにより同10月から丹後半島全域でスタートしたもの。この計画は運賃低減のほかにも、ダイヤの見直しや鉄道との接続強化、バス停の新設改良、総合時刻表の作成なども施策として含まれている。

我が国の地方路線バスの多くは自治体等の補助金により維持されているが、従前の「運行への補助」から「利用への補助」へと発想を変え、利用客が2倍以上に増加し、逆に自治体の負担額が減少したことから、地方路線バス再生の先進事例として全国に知られている。

「経ヶ岬線」で天橋立駅から中浜へ

目指すは半島の北端、経ヶ岬。この方面に向かうバス停は駅舎の目の前にある。バス停ポールには時刻表の他に路線図が掲出されている。この図、路線網が描かれた上で現停留所から乗換なしで行ける区間は色付き太線で表現されており、とてもわかりやすい。また、インバウンド向けに英語の時刻表もある。

半島方面のバス停
路線図
英語時刻表

11:41発の路線番号9「経ヶ岬線」に乗る。この便は岬の少し先にある「宇川温泉よし野の里」まで向かう。事業者は阪急阪神系の「丹後海陸交通」、通称”丹海バス”だ。宮津方面からほぼ定刻通り11:42にバスがやってきた。ノンステップの新型エルガミオ。もっと古い車が来るかと思ったら意外だった。

経ヶ岬線バス
中型ノンステップバス

平日なのでさほど混んでなく、立ち客もいない。客層は地元の人と観光客が半々であろうか。外国人旅客もいる。

バスは一旦西に向かい、与謝野町の中心部を抜けて、天橋立の内海「阿蘇海」沿いに走る。途中、天橋立の北端にある街、府中を通過する。地名から、ここはかつて丹後国の国府があった場所であろうか。今は観光客でにぎわっている。ここから大勢の客が乗り込み、ほぼ満席となった。中国系の外国人が多い。

しばらくは若狭湾沿いに走る。車窓からは海が間近に望め、景色が良い。途中、白い大きなビルが林立していた。調べてみると、地元でスーパーを経営する企業が開発したリゾート施設とのこと。

海沿いを走る

バスは国道を離れ、伊根の集落へと入っていく。路線きっての狭隘区間が始まる。ここは伊根湾に沿って昔ながらの”舟屋”が並ぶ集落で、海外にも知られる観光地となっている。”寅さん”で知られる松竹映画「男はつらいよ」の撮影地となったことがあり、この映画を視てから一度は訪れてみたいと思っていた。今回は時間がないので残念ながら車窓から眺めるだけにする。

伊根でほとんどの乗客が下車した。運転士に話を伺ったところ、ここ数年伊根を訪れる外国人が急増し、バスを利用する観光客の8割が外国人とのこと。そのほとんどが中国系の人で、2月上旬の”春節”の時期には、地元の人が乗りきれないほど混雑したそうだ。

ガラガラになったバスは国道に戻り北上する。乗車してから1時間以上経過しているが、運賃表は最大400円のまま止まっている。「上限200円バス」ではあるが、3つのエリアに分けられており、エリアを跨ぐと更に最大200円が加算される仕組み。

いつの間にか乗客は自分一人になってしまっていた。しばらく内陸を走っていたバスが海沿いに出たところで国道を右折し、港の集落へと向かう。国道を外れると道が狭くなるので、このような狭隘区間では、バス同士の離合を避けるため運転士は無線で現在位置を報告しあっている。鉄道流に言えば「通信式」閉塞といったところか。

港の集落「蒲入」へ向かう

蒲入集落の狭隘区間を進む

集落の突き当りに「蒲入」停留所があった。対向の宮津方面行きのバスが停車していた。対向車を先に出し、スイッチバックで回転場に入る。ここで時間調整のため小休止となった。

ここは良い雰囲気の漁港だ。おいしい”漁港めし”が食べられるそうだが、残念ながら平日は営業していない。

蒲入停留所に進入する

蒲入停留所にて

蒲入を出発し、バスはいよいよこの路線のハイライト、断崖絶壁の区間へと進む。「男はつらいよ」で寅さんが思いを寄せる女性に逢うため、ここを通るバスに乗り伊根に向かう場面があった。そこで映し出された崖をなぞって走るバスの姿が強く印象に残っている。

断崖絶壁を進む

小さなトンネルを抜けると「経ヶ岬」停留所だ。バス停から岬の先端にある灯台までは少し歩かなければならない。これから乗り継ぐ「間人(”たいざ”と読む)」方面へのバスはここが折り返し点であるが、今回はここでは降りず少し先の「中浜」停留所で下車する。近くに中浜郵便局があるので、旅行貯金(貯金をして通帳に局名のゴム印を押してもらうこと)ができる。

経ヶ岬通過

「中浜」には定刻13:30に到着。運賃400円を支払い下車する。郵便局訪問後、間人方面行が来るまで時間があるので、一つ手前のバス停「中浜海ノ家前」停留所まで歩いてみる。ここは海水浴場になっているので、夏のシーズンは賑わうことだろう。

中浜停留所
中浜の風景

中浜海ノ家前停留所

この停留所にも路線図が掲出されていた。ここを通る2つの系統が色分けされており、とてもわかりやすい。これを各停留所毎に作成・掲出するのには大変な労力とコストが掛かることだろう。しかし、公共交通を活性化するということは、このような利用者の視点に立った地道な取り組みを積み重ねることであると思う。

「丹後峰山線」で中浜から間人へ

次に乗るバスは、路線番号47「丹後峰山線」。間人を通り途中内陸部を経由して峰山駅まで向かう系統である。バスは13:51時刻表通りに来た。乗客ははじめ自分一人のみであったが、途中から地元の人が乗ってきた。

丹後峰山線のバス
丹後峰山線車内
日本海沿いを走る

30分ほどで間人停留所に到着。運賃は同一エリア内なので200円であった。ここは間人の街の西のはずれの方に位置している。小さな車庫と乗車券発売所「間人案内所」があり、いわゆる”バス駅”の雰囲気だ。なお、京都行の高速バスがここから1日2本出ている。

間人到着
車庫
案内所・待合室
きっぷ売り場
時刻表
「海岸線」で間人から網野駅へ

半島一周の最終ランナー、路線番号45「海岸線」網野駅経由峰山方面行は15:16の発車。小一時間あるので間人の街を散策してみる。海沿いに道路が走り日本海を一望できる。岩場に降りて磯遊びができる所もあり、ちょっとした時間つぶしが可能。

ここは”幻の蟹”といわれる「間人ガ二」の水揚げ地で、漁獲量に限りがあるので大変高価なものであるとのこと。食したことはないが、機会があれば食べてみたい。

磯遊びができる岩場
間人の街並みを望む
漁協にて
間人の街並み

15:16発「海岸線」のバスがやってきた。既に夕方の時間帯に差し掛かっている。これまでの便とは打って変わって、学生で満員であった。

海岸線のバス

間人から網野駅までは30分ほどで到着。運賃は200円。網野駅は市街中心から南方にかなり離れており、駅前には数件の飲食店等のほかは何もない。駅舎は改築されて近未来的な姿になっており、中に観光案内所が併設されている。

ここから、予約してあった京都行の高速バス最終便に乗り込んだ。

丹鉄網野駅
丹後海陸交通高速バス京都行
感想

駆け足ではあるがこの”先進地”を実際に旅してみて、運賃を下げるということと同時に、総合的な公共交通体系を構築することがやはり重要である、ということを大いに感じた。

各自治体では、鉄道・バス・タクシーの情報を網羅した総合的なガイドブックを作成し、駅や観光案内所などでも容易に入手できる。バスも全便・全停留所をきちんと掲載し、利用者の立場に立った内容となっている。

その反面、事業者の側には、まだ受け身の姿勢がうかがえる。京都丹後鉄道の公式サイトによると、同社の経営ビジョンとして「高次元公共交通ネットワークの実現」が掲げられているが、そこで謳われている理想像にはまだ届いていないように感じた。配布時刻表やパンフレットでの路線バス接続案内や、車内・駅構内での掲出物や放送など、もう一歩踏み込んで鉄道とバスの有機的なネットワークの構築を期待したい。

活性化に成功している要因として、まず住民や自治体の熱意によることは当然ではあるが、その前提条件として、鉄道・バスとも地域で一社独占となっている事業者構成も大きく影響しているのではないかと思う。もし複数の事業者が同一エリアで競い合っていたとしたら、岡山の例(「両備グループ」と新規参入事業者の争い)をあげるまでもなく、その調整は容易ではなかろう。

我が国の鉄道・バスは、旧国鉄や一部の公営交通を除き、伝統的に民間企業による個別の営利事業として成り立ってきた。したがって、事業者もその従事員も、自社の事業の都合が最優先となり、視点が内向きになる傾向がある。例えば、異なる事業者の鉄道とバスを連携させようとしても、一方が遅延するなどして接続が取れなくなったときに誰が責任を取るのか、という話しがまず出てくる。また、他社の施策には責任を持てないので、自社の案内しかするべきではない、といった思考に陥る。

交通は”普遍性”が命である。自動車交通がこれだけ発展したのは、普遍性を貫いてきたからであるといえる。車を運転するときに、ドライバーは誰が道路管理者であるかということを意識するだろうか。しかし、公共交通には、まず交通モード間の壁があり、さらに事業者間の壁が立ちはだかる。

このような壁を打ち破り、真の”総合交通体系”を構築するため、行政も事業者も、そして公共交通従事員も真剣に取り組んでいかなければならないと感じる。

関連リンク

京都丹後鉄道

丹後海陸交通

3件のコメント

  1. 不採算路線への新車導入は、よくあることです。
    路線運行補助金には車両の購入補助もあり、実質タダでピカピカの新車を手に入れられるからです。
    耐用年数5年間で補助金が支払われるため、広電など多くのバス事業者で5年たったら採算の取れる市内線などの路線に転用して、補助金の出る赤字路線に新しいピカピカの新車を入れています。
    これにしびれを切らしたのか、国土交通省ではバスの耐用年数を延ばして一応違法ではないが悪質なバス車両購入補助金の申請を抑制しよとしているようです。

    1. 情報ありがとうございます。確かにあまりほめられたことではないかもしれませんが、バス事業者も設備投資の予算制約がある中で、何とか補助金を活用して車両更新を進めようとする苦心もわかる気がします。
      耐用年数延長の話は初めて聞きました。税法絡みなので、話が難しくなっているのかもしれませんね。

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