【2022年10月】プノンペン国際空港と市内中心部を結ぶ路線バスに乗車

プノンペン国際空港と市内中心部を結ぶ市内バス「3」系統に乗車してみました。バスの乗り方などの基本情報と、実際に乗車した時の様子を詳しくお伝えします。

基本情報

空港アクセスの概要

カンボジアの首都プノンペンの玄関口、プノンペン国際空港は、市中心部から西に約8kmの場所に位置している。

空港と市中心部の間を移動する手段はタクシーやトゥクトゥク、ホテル送迎車などがメインとなるが、空港の前を通る市営の市内バス「3」系統も利用することができる。

なお、2018年に開業した、空港とプノンペン駅を結ぶ空港鉄道「エアポートレールシステム」は2022年10月現在運行休止となっている。

市内バス「3」系統について

市内バス「3」系統は、市北郊のRussey Keo区から市中心部のナイトマーケット、セントラルマーケットを経由して西に向かい、プノンペン国際空港を経て市南西部の郊外に至る路線である。

運行時間は5:30から20:30まで。運賃は1500リエル(日本円で約50円)。

2022年10月現在、市内バスは13路線あるが、この「3」系統は最も混雑の激しい路線であるとされている。

3系統停留所案内

市内バスの乗り方

情報はアプリで

路線の経路やバス停の位置などの情報を得るには、専用のアプリを利用するのが便利。GPSによるバスロケーションシステムで、バスの現在位置がリアルタイムにわかるので心強い。ただし、アプリに登場しない”ステルス便”が多数あるので、あくまで参考程度に使うのが良いだろう。

‎City Bus Official App
‎City Bus App is an application which provides information of Phnom Penh City Bus such as real time bus location, all available routes, search a specific route,...
City Bus Official App - Apps on Google Play
Mobile app which provides information of public Phnom Penh City Bus
バス停の様子

バス停には立派なポールが建てられており、停留所一覧や路線図などが掲出され、情報は中々充実している。

バス停の例

ただし、残念ながら路線図はクメール語表記のみなので外国人には分かりにくい。

路線図

また、下の写真の様にデリカシーに欠ける扱いを受けているバス停もある。このように発展途上国ではまだまだ”公共性の概念”が希薄なのが実情だ。

分かりにくいバス停
バスが来たら

バスはブルーのいすゞ製とシャンパンゴールドの中国宇通客車製のものがある。路線系統番号は前面に掲出されているが、行先表示はクメール語表記のみであるため分からない場合は番号と走る方向で判断するしかない。

いすゞ製のバス
中国宇通製のバス

目的のバスがやってきたら、手で合図して乗る意思を運転士に伝える。

乗る合図
運賃の払い方

現在はコロナ対策のためか、乗降とも中扉で行われている。運賃の1500リエルは乗車時に中扉出入口にある運賃箱に投入する。お釣りは出ないので注意。またリエルが無い場合は1米ドル札で払うこともできるが、かなり割高になってしまう。

運賃箱

運転士によってはこのような乗車券を発行してくれる場合がある。

乗車券
降りるとき

ワンマンバスなので車掌は乗務していないため、降りる場所が分からない場合は常にアプリで自車位置を確認するのが確実。

目的のバス停が近づいたら、日本と同様に降車ボタンを押して降りる意思表示する。

降車ボタン

バスが停車したらそのまま中扉から降車する。なお、降りるときに運転士にお礼を言うのがカンボジア流。

乗車体験記

空港から市内へ

リエルを手に入れる

入国審査を終えターミナルビルの外にでると、既に陽は落ちて暗くなってしまっていた。あたりは出迎えの人々でやけに混雑している。

到着ターミナル外

カンボジア・リエルを手に入れたいので両替所を探すが見当たらない。ターミナルビル内にはあったが戻ることはできないので、仕方なくATMでキャッシングすることに。

ATM

ATMは米ドルが引き出せるものとリエルが出せるものの2種類あった。何とかリエルを手に入れることができたが、50000リエルというバスの運賃を払うには途方もない高額紙幣が出てきてしまった。

手持ちの1米ドル札で払うこともできるが、ここはリエル払いにこだわりたい。何とか細かくする方法を探すべく出発ターミナルに入ると両替所を発見、係員氏に頼み込むと1000リエル単位までスモールチェンジしてもらえた。やれやれ、余計な時間がかかってしまった。

出発ターミナルへの通路
空港から大通りに出る

さて、これで空港に用は無くなったのでいよいよバスに乗ることにする。市内バスの乗り場はターミナルビル前を走る大きな道路(ロシア連邦大通り)にあることは事前に分かっていたので、まずは空港の敷地から出る必要がある。

と、ここで再び難問が。徒歩で空港敷地から出る通路が分からない。ターミナル建物前は駐車場になっており、その向こうを走る大通りとの間にはフェンスがあり行く手を阻む。

休止中の空港鉄道の駅から出られるかと思ったがダメ。

空港鉄道の駅

暗い駐車場内をキャリーケースを引きずりながら彷徨い続けること数分、やっと出口が見えてきた。

大通りへの出口

後日、明るい時に撮った出口への通路は下の写真。到着ターミナルの目の前の横断歩道を渡り、駐車場料金所の脇を通り抜けていく。最初から分かっていれば極めて簡単であった。

空港出口への通路
空港外のバス停

やっとの思いで空港からの脱出に成功すると、東南アジアらしい混沌の世界が待っていた。とりあえずアプリ上で表示されているバス停の位置まで南西に向かって歩いていく。路側帯には車やトゥクトゥクが陣取っており邪魔で仕方が無い。

バス停への道

出口から歩くこと2~3分、バス停が見えてきた。上家とベンチが設置され、一応雨風をしのぐことができる。

バス停が見えた

アプリでバスの位置情報を確認するが、終点の南西方向から空港方面にやってくるバスは表示されていない。まだ18時台の通勤時間帯であるため便数はそれなりにあるはずだが、位置情報が正しいとすれば、これから終点に向かうバスが折り返してやってくるまであと30分以上は待つ羽目になろう。

しばらくすると、自分が来た道の反対方向からバックパッカーの若い欧米人女性がやってきた。彼女も空港からの出口が分からず、南西側の駐車場出入口の方に大きく迂回してきたのであろう。

バス停に着いてから15分が経過。ここまででもう疲れてしまったので、あきらめてタクシーに乗ろうかと思ったその時、アプリに表示されていないバスがやってきた。

バス到着
乗車

運賃箱に2000リエルを投入。所定の運賃より500リエル多いが、バスへの寄付の意味も込めて。先ほどのバックパッカーさんはリエルを持っていないらしく、米ドルで支払っていた。

バスは中国宇通客車製のワンステップ車。やや混んでいたが後方の座席に座ることができた。客層は老若男女様々だが、車内は何となくのんびりした雰囲気が漂っている。

車内の様子

バスはプノンペン中心部に向けて東に進むが、渋滞が激しく中々進まない。グーグルマップで交通状況を確認すると真っ赤に染まっている。これは時間がかかりそうだ。

しばらくすると、雨季の象徴であるスコールが始まってしまった。正にバケツをひっくり返したような雨で、しばらく止む気配が無い。

なお、今夜宿泊するホテルはバスのルートからは離れているため、途中でタクシーに乗り換えることになる。どこで下車してもよいが、場所が分かりやすいセントラルマーケット付近のバス停で下車することにした。車内には次停車表示などが一切無いので、アプリで常に位置を確認しながらの乗車である。

途中で例のバックパッカーさんが英語で話しかけてきた。今バスはどこにいるのか、どこで降りるべきなのか状況が把握できていないらしく、アプリを見せて現在位置などの状況を教えてあげる。

下車

空港を出てから40分が経過し、ようやく市中心部を南北に走る目抜き通りの「モニボン通り」を通過する。

セントラルマーケット西側の№30バス停「Kimly Jewelry Shop」で下車。空港からの所要時間は42分であった。

№30バス停(後方にセントラルマーケット)

まだまだ雨が強いので、バスを降りて店の軒先に飛び込む。ここはバス停の名の通り宝石・貴金属店が並んでいる場所。

ここからホテルまでタクシーで移動する。他の東南アジアの都市同様、プノンペンでも「Grab」や「Pass App」といったタクシー配車サービスの利用が便利だ。使い方は簡単で、スマホに専用アプリをインストールし、地図上で乗車位置と目的地を設定、あとは表示されたナンバープレートの車が来たら乗り込むだけ。運賃はあらかじめ自動的に計算され、クレジットカード情報を登録しておけばそのまま決済されるのでボラれる心配もない。車種は普通乗用車やトゥクトゥクなどがあり、近距離で大きな荷物が無ければ安いトゥクトゥクで十分だ。

配車サービス「Pass App」のトゥクトゥク

市内から空港へ

プノンペンを去る日、空港への帰路もバスを利用してみることにした。

往路で降りたバス停の隣、セントラルマーケット東側の№B25バス停「Central Market」から乗車する。すぐ向こう側にはセントラルマーケットの特徴的な建物が見える。

バス停に着いて早速アプリでバスの位置情報を確認。市街北方の起点から南下してくるバスはいくつか表示されているが、すべて別の系統のようだ。

しばらくすると、アプリに表示されないバスが近づいてきた。残念ながらフロントに”4B”の表示があり、別の系統のバスであった。

4B系統のバス

バス停に着いてから約20分後、ようやく「3」系統のバスがやってきた。これもアプリには登場しない”ステルス”便。もう少し精度を上げてほしいものだ。

3系統のバス

料金箱に2000リエルを投入し着席する。時刻は14時を少し回ったところだが程よい乗車率。学校帰りの学生も乗っている。

車内の様子

バスは順調に西に向かって進む。まだこの時間帯はそれほど渋滞は激しくはないが、大きな交差点付近は流れが悪い。下の写真のように立体交差化されている所もあり、自動車交通量の増加に対応するため道路改良が進められている。

立体交差

アプリには両方向のバス停の位置がそれぞれ表示されているが、なぜか空港前には今乗っている西方面行きのバス停の表示が無い。まさか片方向だけバス停が廃止されてしまったということはあるまいと思いつつ、念のため運転士に空港で降りたい旨を伝えておく。

バスは空港ターミナルビルから大通りを挟んで北西側にあるイミグレーションオフィス付近で停車した。付近にバス停の表示は見当たらないので、便宜的に停車してくれたのであろうか。なお、セントラルマーケットからの所要時間は36分であった。

バスを見送る
イミグレーションオフィス

さて、空港を目の前にして大きな問題が。。。車が行き交う大通りを何とかして渡らなければならない。残念ながら付近に信号や横断歩道は見当たらない。

近くにいたトゥクトゥクのドライバーが乗れと声を掛けてくれたが、それを断り決死の思いで片側3車線の大通りをなんとか渡り、無事空港に入ることができた。

感想

メリットとデメリット

結論から言うと、空港アクセス手段として市内バスを利用することは現時点ではあまりお勧めできない。その最大の理由は、やはりバス停の位置の問題だ。空港から市内に向かう場合はさておき、前述した通り市内から空港前で下車した際に必要な大通りの横断は非常に危険だ。

また、スーツケースなど大きな荷物を持っている場合は利用できない。機内に持ち込める程度の大きさのキャリーバッグが限度であろう。

更に、いわゆる”ステルス”便があることからアプリのバスロケシステムへの信頼性の問題がある。いつやってくるかわからないバスを待ち続けるのはなかなかキツい。

一方、メリットとしてはやはり移動コストの安さがあげられる。タクシーで空港から市内まで約10米ドル程度かかってしまうが、バスとタクシー、トゥクトゥクを上手く組み合わせることでコストを半額以下に抑えることも可能である。

また、庶民が使う路線バスに乗ることにより、庶民生活の一コマを垣間見ることができる。そのような探求心・冒険心を持って旅行されている方や、バスが好き、公共交通の利用にこだわりたいといった方はぜひ利用してみて頂きたい。

今後の方向性

今回プノンペンを訪れたのは、1996年以来実に26年振り。当時はポル・ポト率いる「クメール・ルージュ」が依然として国内の一部地域でゲリラ的な活動を続けていた時代で、首都プノンペンは一応治安は保たれていたものの、長きにわたる内戦で疲弊した状態からようやく立ち直りつつある頃であった。

タイの田舎町のような街並みからビルが建ち並ぶ近代都市に変貌するとともに、26年前には皆無であった都市公共交通システムが機能している様子を見ると、まさに隔世の感がある。

プノンペンにおける本格的な市内バスの運行は、2014年のJICA開発計画調査型技術協力で実施された社会実験から始まり、当初3路線であった路線網が順次拡大されてきた。

しかし、新型コロナ感染症の拡大により、2020年3月に全路線の運行を休止、2021年11月から徐々に運行が再開されてきたものの、乗客数はコロナ渦前より大幅に減少している状況とのこと (※1)。

※1 参考記事:The Phnom Penh Post 2022.6.20 https://www.phnompenhpost.com/national-post-depth/phnom-penhs-citybus-rolls-despite-covid-downturn

現在はコロナ渦前の運行水準に戻りつつあるが、乗客を取り戻すのは容易なことではない。今後はバス専用レーンの設置などで定時性を確保、またバスロケシステムの改良などを行い、自動車に対する競争力を高めていく必要があろう。

関連リンク

鉄道コム

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