「名古屋から最も近い島」として知られる、三河湾に浮かぶ篠島(しのじま)と日間賀島(ひまかじま)。知多半島と渥美半島から高速船を使って気軽に日帰り離島の旅を楽しむことができます。今回、渥美半島側から両島を通り抜ける形で知多半島に向かいました。風景と海の幸を楽しみながら、鉄道、バス、船を乗り継いで行く旅の様子を詳しくお伝えします。
基本情報
概要
島へのアクセスは、知多半島中部の河和港または南部の師崎港、及び渥美半島西端部の伊良湖港から、それぞれ「名鉄海上観光船」が運航する高速船の航路がある。
日間賀島には西港、東港の2港があり、便により経由する港が異なる。各港間の所要時間及び運賃は以下の通り。
表1 高速船所要時間及び運賃
区間 | 所要時間 | 片道大人運賃 |
---|---|---|
河和-日間賀島 | 20分 | 1,420円 |
師崎-篠島・日間賀島 | 10分 | 710円 |
篠島-日間賀島 | 10分 | 410円 |
伊良湖-篠島 | 20分 | 1,420円 |
※所要時間はおおよその目安※運賃には高速船に適用される急行料金を含む※小児運賃は半額だが、普通運賃と急行料金それぞれ10円未満端数切り上げとなる
このうち最も一般的で便利なルートは、鉄道利用の場合は河和港から、自動車利用の場合は師崎港から高速船に乗るルート。伊良湖港からのルートは1日3便のみでやや不便だ。
なお、名鉄知多線の河和駅から河和港までは徒歩で約7分ほどかかるが、高速船の発着時刻に合わせて無料のシャトルバスが運航されている。
この高速船とは別に、師崎港と篠島及び日間賀島(北港)の間で「名鉄海上観光船」のカーフェリーが運航されている。こちらは所要時間が20分ほどかかるが、運賃は片道610円と格安。
周遊乗船券
島巡りに便利な周遊乗船券が発売されている。例えば、河和を出発して日間賀島、篠島両島を巡って河和に戻る場合、普通運賃は3,250円となるが、周遊乗船券は2,800円と安くなる。同様に、伊良湖から両島を巡って河和に向かう場合も、普通運賃は3,250円だが周遊乗船券は2,800円である。
表2 周遊乗船券の設定区間および料金
区間 | 大人料金 |
---|---|
河和-両島-河和 | 2,800円 |
師崎-両島-師崎 | 1,500円 |
伊良湖-両島-伊良湖 | 2,800円 |
師崎-両島-河和または伊良湖 | 2,100円 |
河和-両島-伊良湖 | 2,800円 |
※小児料金は半額
なお、この周遊乗船券は乗り放題の”フリーきっぷ”ではなく、片道のみ有効のきっぷで、目的地到着時に無効となる。有効期間は発売日から2日間で、島内で一泊することも可能。
旅行記
豊橋鉄道渥美線
今回の旅の起点は豊橋駅。渥美半島に向かう豊橋鉄道渥美線が最初のランナーだ。島への高速船が出る伊良湖岬までは渥美線の列車とバスを乗り継いで行く。
渥美線の起点、新豊橋駅はJR豊橋駅に隣接している。橋上駅のJR駅とはペデストリアンデッキで連結されているが、渥美線の改札は地上階にある。
8:15発三河田原行きに乗車するためホームへ向かう。改札口にはICカード用の簡易改札機が設置されている。比較的小規模な地方私鉄であるが、Suica等の全国交通系ICカードが利用可能な点が素晴らしい。
列車は新豊橋を定刻に発車。3両編成で、乗客は1両当たり10名程度。休日朝の下り列車なので乗客が少ないのも致し方ない。
しばらくは住宅街の中を走っていくが、大清水駅を発車すると沿線は畑が多くなる。このあたりまで来ると乗客は片手で数えられる程度に減ってしまった。
この渥美線は、早朝・深夜の時間帯を除けば15分ヘッドでの運転。途中で何度か上り列車と交換する。中間駅は14駅あるが、そのうち8駅に行き違い設備がある。また、特筆すべきは全列車車掌が乗務するツーマン列車であること。
線路設備は枕木のPC(プレストレスト・コンクリート)化が進んでおり、軌道の状態も良く乗り心地も悪くはない。一方、電車線支持物は昭和30年代に建植された木柱が現在も一部で使われている。
終点三河田原に定時到着。ホーム2面、線路4線の立派なターミナル駅だ。
久々に訪れた三河田原駅だが、地元自治体の田原市による駅周辺整備事業により大変貌を遂げていた。駅舎は安藤忠雄建築事務所の手によるもので、デザイン性と機能性に富んだ建物となっている。
鉄道とバス・タクシーとの交通結節点の機能が重視され、改札口から駅前ロータリーの各乗り場まで段差の無い屋根付きの通路でスムーズに移動できる。
案内板にはバス路線図や列車とバスの乗継時刻表などが分かりやすく表示されている。交通はネットワークが”命”だ。
バス乗り場は1番から3番まであり、豊橋鉄道子会社の豊鉄バスと市のコミュニティバス(ぐるりんバス)の各系統が発着する。他に渋谷・新宿行きの夜行高速バスが1日1本あるが、新型コロナウイルス感染症の影響により運休中。
豊鉄バス伊良湖本線
さて、ここからバスで伊良湖岬まで向かう。「伊良湖本線」と「伊良湖支線」の2系統が発着するが、岬へ向かう便は「伊良湖本線」の一部便で、日中は概ね1時間に1本程度。
なお、今回の旅の後、2020年10月1日にダイヤ改正が実施され、運行系統が大きく変わっている。岬まで行く便数は11本から12本に増発となった一方、時間帯によっては途中の保美で乗り換えが必要となる(逆に岬から田原駅方面への便は土休日のみ1便減)。
8:59発の伊良湖岬行きに乗車。2016年式三菱ふそうエアロスターワンステが来た。
8:59定刻に発車。乗客は筆者含めて4名のみ。
県道28号から国道259号に入り、17分ほど走ると右手に海が見えてきた。しばらく海沿いの区間を走る。
旧渥美町の中心部を通過すると、再び内陸部を走っていく。この辺りは広い平地と温暖な気候を生かした農業が盛んで、特にマスクメロン栽培が有名。
再び海が見えると終点の伊良湖岬に到着。時刻は9:46、ほぼ定刻だ。田原駅からの運賃は1,070円。残念ながらSuica等ICカードは使えないので現金で支払う。
伊良湖岬を散策
伊良湖岬には、篠島、日間賀島に向かう「名鉄海上観光船」と、鳥羽に向かう「伊勢湾フェリー」、伊勢湾に浮かぶ神島に向かう「神島観光船」の航路が発着する。
バス停の目の前には、道の駅併設の立派な旅客ターミナル施設「伊良湖クリスタルポルト」がある。しかし、2020年9月現在、新型コロナウイルス感染防止のためターミナル内の施設は閉鎖されてしまっていた。
ターミナル内に入ることはできないが、各航路は通常通りの運航されており、乗船券は各社事務所にて発売されていた。ターミナル入口には乗り場の案内表示がある。
案内表示の指示に従い、建物右手にある通路を通って、名鉄海上観光船のきっぷ売り場に向かう。
便数は3本。全便が篠島、日間賀島西港経由の河和行き。午前中は11:05のみで、これを逃すと夕方まで便が無いので要注意。
早速乗船券を購入する。前述の通り島巡りには周遊乗船券が便利でお得だが、最終目的地をどこにするかによって値段が異なるため、発券時に決めなければならない。今回は師崎まで行くことに決めた。
時刻はまだ10時前。出発まで1時間以上あるので、伊良湖岬の灯台まで行ってみることにする。
ターミナルの案内板には、「恋さんぽ」と称する散策案内図が掲示されていた。灯台までは650m(所要時間15分)とのことなので、余裕で行って来られる。
歩きやすい遊歩道が整備されており足元の不安は全くない。しばらく進むと純白の灯台が見えて来る。もっと大きくて立派な灯台をイメージしていたが、思ったより小さいので少し驚いた。
なお、灯台のすぐ北側尾根上には、海上保安庁伊勢湾海上交通センターの立派なタワーが建っている。海の安全を守る主役はこちら。
灯台から少し足を延ばして「恋路ヶ浜」に行ってみた。白く美しい砂浜で、「椰子の実」という島崎藤村の抒情詩の舞台として知られているとのこと。
散策を終え港に戻る。先ほどより船を待つ乗客が増えていた。左手のフェリー桟橋からは、10:50発伊勢湾フェリー鳥羽行きが出港して行く。
伊良湖から篠島へ
11時少し前に、篠島方面行き高速船の乗り場案内放送が流れた。待機していた乗客が一斉に乗り場に向かう。高速船の乗り場はターミナル建物右手の浮き桟橋。
11:00、1番乗り場に折り返しとなる河和からの便が定刻に到着。船名は「はやぶさ3」。2019年就航の同社最新鋭の船だ。
11:05、定刻で出港。海風が気持ちいいデッキで船旅を楽しむ。三河湾は陸地に囲まれた閉鎖性水域のため、波はおだやかで船も大きく揺れることは無い。
出港から15分、左手に無人島の野島、そして細長い形の篠島に近づく。周辺には大小の付属島があり、景色の美しさから「東海の松島」とも呼ばれている。
篠島港は島の北部にある。島の北端部をぐるっと回り込んで入港していく。桟橋には篠島からの乗客が大勢並んでいた。
11:28、1番乗り場に到着した。
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