列車を乗り継いで台湾を一周しました。前回記事(その2)に引き続き旅の模様をお伝えします。
今回は台東から東部幹線を北上して台北に戻る時の様子です。台鉄の花形列車、普悠瑪号と太魯閣号の乗り比べをしました。
なお、2019年12月20日、屏東線潮州-枋寮間電化に伴い大規模なダイヤ改正が行われました。本記事の時刻等は実際に乗車した旧ダイヤにて記載しております。
乗車データ
乗車区間 | 台東-花蓮 | 花蓮-宜蘭 | 宜蘭-台北 |
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事業者 | 台湾鉄路管理局 | 台湾鉄路管理局 | 台湾鉄路管理局 |
列車番号 | 普悠瑪425 | 太魯閣229 | 自強181 |
車両形式 | TEMU2000 | TEMU1000 | E1000 |
乗車時間 | 2時間 | 1時間5分 | 1時間29分 |
運賃 | 343NTD | 223NTD | 218元 |
台南駅の様子
台東市は台湾島南東部にある台東県の県政府所在地。緯度的には西側の高雄市とほぼ同じ位置である。
台東駅は、台湾中央山脈の東側を縦断する東部幹線と南廻線の接続駅。台東市の市街中心部から北西に約6kmほど離れた郊外にある。
かつて市街中心部にあった旧台東駅は2001年に廃止。同時に当時中間駅で南廻線の分岐駅であった当駅(当時”台東新駅”と呼称)が代わりに市の玄関口となった。
駅前はまだ開発途上といった感じ。県政府所在地の代表駅としてはやや寂しい。
駅舎から出て右手には、立派なバス乗り場が整備されている。バスの本数はそれほど多くは無いようだ。
”公路客運替代運輸”の案内板が掲示されていた。これは南廻線の電化工事に伴い一部曜日(月~木、土)の夜間・早朝時間帯に実施される列車運休の代替として運転される、いわゆる”列車代行バス”である。なお、2017年から2年半にわたり実施されたこの措置は、2019年12月19日をもって終了とのこと。
駅舎前の大屋根があるスペースには、コンビニや土産物店、カフェなどが営業している。最近大規模な改装工事が行われたようだ。
駅舎は近代的な建物。駅舎内には、きっぷ売り場やコンビニの他に、鉄道グッズや駅弁などを販売する「台鉄夢工場」の店舗がある。
ネットで予約した列車の乗車券を発券。自動券売機で予約番号とパスポート番号を入力することで簡単にできる。
ここから花蓮までは「普悠瑪号」、花蓮から宜蘭までは後続の「太魯閣号」に乗る行程。宜蘭から先はまだ決めていない。本当は台北まで通しで乗りたかったのだが、あいにく満席のためこのような細切れ乗車となってしまった。せっかくなので様々な列車を乗り比べてみたい。
普悠瑪号で台東から花蓮へ
まずは14:00発の普悠瑪425列車に乗車する。自動改札機にきっぷを投入し入場。
当駅は車両基地にもなっており、広い構内には様々な車両が留置されている。
3A乗り場には既に白と赤に塗られたTEMU2000型電車が停車していた。製造メーカーは日本車輌製造。車体傾斜式なので、曲線の多い区間でも高速で運転できる。
「普悠瑪号」の名は、この車両そのものの愛称であると共に、この車両を使用した列車の愛称でもある。列車種別としては、日本の特急列車に相当する「自強号」の範疇に入る。
発車時刻が迫っているので早速乗り込む。車内はJR特急の雰囲気に似ている。
14:00、定刻に台東を発車。乗車率は8割程度か。人気の高さが窺える。
しばらくは台湾東部の主要河川、卑南渓に沿って北上する。台東駅のすぐ北側には「小黄山」と呼ばれるプレートに押されて隆起した台地が、卑南渓の水により複雑に削り取られた珍しい地形があるが、線路は台地内をトンネルで駆け抜けてしまうため、残念ながら車窓からは見えない。
台東線は一部区間を除き単線であるが、随所で線形改良が行われているため列車の速度は比較的高い。水田地帯の中を列車は駆け抜けていく。
行き違いのため池上駅でしばらく停車。ここは台湾随一の米どころで、当地産の米を使った駅弁「池上弁当」が有名だそうだ。
下り普悠瑪号と交換し、14:35発車。池上を出ると台東県から花蓮県へと入る。
台湾東部一の大河、秀姑巒渓とその支流楽楽渓を渡ると、台東線内最大の駅、玉里に到着する。
玉里は運転上の拠点駅となっており、当駅折り返しの区間車も設定されている。ちょうど区間車用のEMU500型が停車していた。
14:54、玉里を定時発車。秀姑巒渓沿いを北上していく。
このあたりのちょうど東側に、台湾最高峰の玉山(3,952m)がそびえている。日本統治時代は「新高山(にいたかやま)」と呼ばれていた名山だ。
吉安で下り太魯閣号と行き違い。若干の遅れで発車。
16:00、3分遅れて花蓮に到着した。
多数の乗客が乗車、ほぼ満席で発車して行った。出発合図を行う女性副站長の指差喚呼が凛々しい。
花蓮駅の様子
花蓮駅は東部幹線最大の駅。駅舎は2018年に完成したばかりの橋上駅舎である。
駅は市街中心部に近いため、駅前もそれなりに賑わっている。
駅前広場にはバスの営業所(花蓮客運新站)がある。ここ花蓮は台湾を代表する景勝地、太魯閣(タロコ)渓谷の観光基地となっており、駅前から路線バスが出ている。
太魯閣渓谷の中心部、天祥までは日中1時間に1本程度便がある。観光用のフリーきっぷ等も発売中。
さて、ここから宜蘭まで16:30発の太魯閣229列車に乗車するが、その先の行程は決めていなかった。区間車でのんびり行くのもよいが台北到着が遅くなってしまうので、空席がある後続の自強号に乗ることにした。早速券売機で発券する。
ホーム3面に多数の側線を有する非常に大きな構内である。
太魯閣号で花蓮から宜蘭へ
太魯閣229列車が3A乗り場に定時で到着。多数の乗客が乗車する。
16:30、花蓮を定時発車。乗車率は8割程度か。
列車は快調に飛ばすが、振動がやや大きく、時折ドンと突き上げるような騒音が気になる。線路の状態にもよると思うが、普悠瑪号の方が乗り心地は良いと感じた。
この太魯閣号も普悠瑪号と同様日本製の車両だ。メーカーは日立製作所で、JR九州の885系特急形電車とは兄弟にあたる。
太魯閣渓谷最寄りの新城を通過すると、渓谷を流れる立霧渓を渡る。台湾中央山脈の急峻な山並みは雲の中。
しばらく山が海岸に迫る険しい地形を走る。現在走行中の北廻線区間は東部幹線の中で最も遅く開通した区間(1980年開通)。現在は全線複線に改良されている。
漢本-武塔間の新観音トンネルは、全長10,307 mの台湾最長トンネル。この付近の海岸線は非常に険しい地形で、南澳神秘海灘と呼ばれる景勝地となっている。
17:05、南澳を定時発車。だいぶ日が暮れてきた。
蘇澳新からは宜蘭線に入る。宜蘭線は終点の蘇澳までの一駅区間のみ”盲腸線”となる。
17:35、定刻より2分遅れて宜蘭に到着した。
宜蘭駅舎は森の絵が描かれ、車寄せにはなぜかキリンが乗っかっている。調べてみると、ここ宜蘭市は台湾の著名な絵本作家、幾米(ジミー)の故郷で、駅舎の装飾は彼の作品とのこと。
駅舎内にはバスの乗り換え案内が掲出されている。近くのバスターミナルへの案内図や、詳細な路線図が表示され、非常に分かりやすい。
自強号で宜蘭から台北へ
17:58発の自強181列車で台北に向かう。
やや遅れて181列車が入線してきた。E1000型だ。
このE1000型、両端に動力車を配置し中間車は全て付随車(モーター無しの車両)という、いわゆる”プッシュプル方式”とよばれる電車である。日本には存在しないタイプの車両だ。
乗車率は6割程度か。やはり太魯閣号、普悠瑪号の高速電車に人気が集中している様子。
約2分遅れて発車。既に陽が完全に落ちているので車窓は真っ暗。
トンネルが連続する区間を抜けると、九份老街最寄りの瑞芳に停車。観光客が乗車してくる。
続く七堵まで来ると都会の雰囲気に。台北はもうすぐだ。
19:29、3分遅れで台北に到着した。
自強181列車はこの後西部幹線を南下し屏東まで向かう。
19:32、出発合図(出發號訊)の緑色灯が輝き、181列車は発車していった。
感想
大きな遅れもなく予定通りに台湾一周の旅を終えた。各列車数分程度の遅れがあり、日本の基準からは定時率がやや低いが、これは逆に日本の鉄道が神経質すぎるのかもしれない。
兄弟ともいえる日本と台湾の鉄道。どことなく昭和の日本の鉄道を思わせる雰囲気があり、日本の鉄道ファンにもなじみやすいであろう。
今回乗車した旧型客車列車は、現在工事中の南廻線電化完成時には廃止される可能性もある。日本ではほぼ失われた、古き良き汽車旅を楽しむ最後のチャンスかもしれない。
魅力あふれる台湾鉄道の旅をぜひ楽しんでいただきたい。
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