悠久の大河メコンを渡る列車の旅。今回はタイ東北部(イサーン地方)の主要都市ウドンタニから、国境の街ノンカイで国際列車に乗り継ぎ、ラオスを目指しました。
(①から続き)
なお乗車時の動画はYouTubeにアップしておりますのであわせてご覧ください。
ノンカイ駅で乗り継ぎ
ここノンカイからラオス側の駅、タナレーンに向かう国際列車は、7:30発と14:45発の1日2本のみ(2023年11月現在)。先ほど列車を降りたホームの奥(ラオス方)に出国審査場があり、その先に国際列車の乗り場がある。
次の14:45発483列車まで2時間以上あるが、とりあえず先にチケットを購入する。等級は3等のみで運賃は20バーツ。チケットは国内列車と同じ様式の機械発券のもので、座席の指定はない。
無事チケットを手に入れたが、あとはとにかく時間を潰さなければならない。この駅はノンカイの中心市街地からはやや離れているが、市内にはわざわざ乗り物に乗ってでも行きたい場所も無いので、あまり動かない方が得策だ。
グーグルマップで駅周辺を調べてみると、日本人がいる食堂があるとのこと。そこで昼食を頂くことにした。
80歳を超えた日本人男性からお話を伺う。タイに来てからもう23年以上、認知症防止のためにこうやって店に来て仕事をしているとのこと。
これから列車でラオスに向かうと話したところ、タナレーン駅周辺には何も無く、バスやタクシーなどの二次交通は皆無。以前娘さんと行ってみたことがあるが、駅から移動するのに大変苦労したとのお話を伺った。
噂には聞いていたが、タナレーン駅はアクセスに難がありそうだ。そこでラオスで普及している配車サービス「Loca」で事前にタクシーを予約することにした。使い方は東南アジアで広く普及している「Grab」と同じく、スマホにアプリをダウンロード、地図上で乗車場所、降車場所を指定し配車希望時間を入力する。決済は日本発行のVISAカードが使える。
とても美味しいガパオライスを頂き満腹になったところで、男性にお礼を言って駅に戻る。あまりに暑すぎるので、我慢ならずに駅構内にある冷房の効いたカフェに飛び込む。
アイスコーヒーを注文し英気を養う。電源コンセントがあったので店員の許可を頂いてスマホも英気を養う。
カフェの隣にはコンビニもある。ここで一通りのものは手に入れられる。
国際列車でラオスへ
発車時刻20分前になり、そろそろと思い国際列車乗り場に向かう。乗客の姿は殆ど見えないが、パスポートコントロールの窓口は開いているようだ。
無事タイ出国を済ませ、ホームに向かう。特にチケットを確認する係員がいる訳でもなく、非常にのんびりとした雰囲気だ。
驚いたことにホームは駅の外からでも自由に出入りできてしまう。もちろん出国手続き後にここから駅の外に出てしまうと不法入国となる。
2両編成の3等客車が停車中。冷房などという気の利いたものは無いので、車内は熱がこもりまるでサウナのよう。外にいた方がマシだ。
石造の立派な駅名標が設置されている。当駅のキロ程はバンコク・フアランポーン駅起点621k100m。
しばらくするとラオス方から機関車がやってきた。HID型と呼ばれる日本製の電気式ディーゼル機関車だ。
連結の様子を見物する。客車手前で一旦停止後、小移動で連結。誘導者は手旗ではなく手で入換合図を送っている。
連結後、機関車をわずかにバックさせ連結が正しく行われているかチェックする後退試験が行われるが、この時に客車にはブレーキがかかっていないので一緒に動いてしまう。お客さんがちょうど乗り降りしていると怪我をする恐れがあるので危険だ。
普通483列車タナレーン行きは無事組成された。あとは発車を待つのみ。
発車時刻が迫ってきたので灼熱の車内へと入る。この客車も日本製で、車内の雰囲気は日本の客車そのもの。
一段下降窓を全開にして一刻も早く熱気を追い出したい。それにしても車内はガラガラ。2両合わせても乗客は10人程度しかいない。
約5分ほど遅れて発車。車内から様子を見る限り当務駅長による出発合図は行われていなかった。出発信号機は色灯式なので自動閉塞方式なのかと思ったら、タナレーン到着時にタブレットキャリアが見えたのでそうでもなさそう。どのような運転取扱が行われているのかよくわからない。
ノンカイ発車後4分ほどで、メコンに架かる国境の橋、友好橋を渡る。以前、バスでここを渡ったことはあるが、列車で渡るのが今回が初めて。道路との併用橋であるが、列車通過時には自動車は一時的に通行止めとなる。
ラオス側に入り、タナレーン駅の手前で一旦停止し駅構内に進入する。駅の周辺は物流基地になっている様子で、コンテナを積んだトレーラーが行き交う。
15:01、タナレーンに到着した。線路はこの先も続いており、出発信号機も点灯している。僅か数日前の2023年10月30日に第2期工事区間のタナレーン~カムサワート間7.5kmの開通式典が行われたとの報道があるが、営業列車の運転区間が延長されるまではまだ時間がかかる様子。
この駅も国境の駅にしてはのんびりした雰囲気だ。イミグレーションで入国審査を受ける。途中で「Loca」の配車依頼時刻を過ぎてしまったので、しびれを切らして帰ろうとするドライバーにアプリ上でメッセージを送って呼び止めることに。「ahamo」海外ローミングの電波状況はあまり良くはなかったが、かろうじて通信はできた。なお、当駅でラオスのSIMが入手できるかどうかは不明。
やっと手続きが終わり駅の外に出たのは15:17、噂通り駅周辺には本当に何もない。駅前には「Loca」のドライバーが待っていてくれたので、すぐに乗車した。
タナレーンからビエンチャン市内へ
このまま「Loca」の車でビエンチャン市内まで行ってもらうことも可能だが、運賃が高くなりそうだったので、市内行きの路線バスが出ている友好橋の国境事務所までの区間で予約してある。距離は3.6km、運賃は64,788.28ラオスキープ(約500円)。ラオスのタクシー運賃は物価水準から比べるとやや割高だが、この距離を炎天下に歩く苦労を考えると安いもの。ドライバーは若い男性で車は中国製のEVであった。
6分で友好橋国境事務所に到着。建物正面にラオスの国章が誇らしげに掲げられている。こちらの方がタナレーン駅よりはるかに賑やかだ。
事務所前にISUZUのバスが停車していた。ここから14系統のバスがビエンチャン中心部のCBS (Central Bus Station) まで運行されている。運行間隔は7:30から18:30まで30分間隔。
早速バスに乗り込む。車内は冷房が効いており快適だ。外観は普通の路線バスタイプだが、ハイバックシートを装備しており、日本流に言う所の”ワンロマ車”のような感じ。
15:38発車。運賃は車内で車掌に払う。友好橋からCBSまで12,000ラオスキープ(約90円)であった。なお、2023年11月5日より18,000キープに値上げされた模様。
途中での乗降も多く利用者はそれなりにいる様子。CBSまでの所要時間は時刻表上では30分であるが、途中にあるバス公社車庫で給油を行ったことと、CBS周辺はやや渋滞気味であったため約40分かかって到着した。
相変わらず半永久的に”建設中”のCBSであるが、行き交う車両はコロナ前に来た時よりも変わっていた。かつて大量に投入された京都市交通局の譲渡車は姿を消し、代わって登場したのは三菱ふそうのマイクロバス「ROSA」。まだピカピカの新車のようで、中にはナンバープレートも着けずに運用されている車も。日の丸が表示されているので日本の政府開発援助によるものだろう。
(タイ・ラオス 鈍行列車の旅 完)
参考情報
参考までに、2023年11月5日現在CBSの掲示板に掲げられていた各系統の時刻表も掲出します(反射により見にくくなっている箇所がありますがご容赦願います)。
お知らせ
この日はラオ プラザ ホテルに宿泊しましま。朝食や客室の様子は、姉妹サイトにて詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
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