日本製のロープウェイで手軽に長城へ。世界遺産”万里の長城”観光おすすめスポット「慕田峪長城」に路線バス等の公共交通で自由・格安に行く方法と、実際に路線バスを乗り継ぎ旅をした時の様子をお伝えします。
基本情報
方法
北京中心部から慕田峪長城までのアクセスは、現在はツアーへの参加やタクシーのチャーターが一般的。しかし、バスや列車といった公共交通を乗り継いで行くことも可能である。
方法は次の3つ。
表1 慕田峪長城への公共交通アクセス 2019年5月現在
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
路線バス 916快 |
・ある程度本数が多いので観光時間を自由に調節できる ・運賃が安い |
・途中で乗り換えが必要 ・多少時間がかかる |
旅遊バス 慕田峪専線 |
・リフト・ロープウェイ乗り場まで乗り換えなしで行ける ・所要時間が短い |
・1日1往復のみ (東直門8:30発、慕田峪長城16:00発) ・運賃が高い(30元) |
鉄道 国鉄京承線 |
・短距離だが中国汽車旅を気軽に楽しめる | ・列車本数が少ない(1日3往復) ・バスへの乗り換えが必要 |
今回は最もおすすめの方法 ”路線バス 916快” で行くことにする。
概要
”916快”は、北京市中心部東側、地下鉄東直門駅隣接の「東直門枢紐站(东直门枢纽站)」を起点とする、北京北郊の懐柔区に向かう快速系統。運行間隔は頻発。発車時刻表は無いが、ある程度乗客が集まったら出発する様子。なお、無印の”916”は各停系統で時間がかかるので注意。
終点に近い懐柔市街地にある「懐柔北大街(怀柔北大街)」で、”H23”等の郊外系統に乗り換える。
表2 慕田峪長城へ向かうバス路線 2019年5月現在
路線 | 916快 | H23,H24,H35,H36,H50,H7 |
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乗車停留所 | 東直門枢紐站(东直门枢纽站) | 懐柔北大街(怀柔北大街) |
降車停留所 | 懐柔北大街(怀柔北大街) | 慕田峪環島(慕田峪环岛) |
乗車距離 | 往路55.45km/復路55.47km | 14.60km |
運賃 (一卡通運賃) | 12元 (6元) | 3元 (1.5元) |
運行時間帯 | 東直門発5:50~19:50、懐柔発4:50~18:50 | 表3参照 |
所要時間 | 70分前後 | 25分前後 |
事業者 | 北京公交集団第七客運分公司 | 北京公交集団第七客運分公司 |
*慕田峪環島で下車後、リフト・ロープウェイ乗り場まではシャトルバスに乗る(15元)。*H24路(1日2往復)のみ、リフト・ロープウェイ乗り場の「慕田峪長城」停留所まで乗り入れる。
表3 (参考) H23路の時刻表 2019年5月現在
懐柔→慕田峪 | 慕田峪→懐柔 |
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懐柔北大街通過見込時刻 | 慕田峪環島通過見込時刻 |
5:50 | 6:10 |
5:55 | 6:30 |
6:25 | 6:40 |
6:55 | 6:55 |
7:10 | 7:40 |
7:25 | 8:10 |
7:55 | 8:25 |
8:25 | 8:40 |
9:40 | 9:10 |
9:55 | 9:40 |
10:25 | 10:55 |
10:55 | 11:10 |
12:05 | 11:40 |
12:45 | 12:10 |
13:25 | 13:20 |
14:05 | 14:00 |
14:35 | 14:40 |
14:50 | 15:20 |
15:55 | 15:50 |
15:35 | 16:10 |
16:05 | 16:20 |
16:35 | 16:50 |
16:55 | 17:20 |
17:15 | 17:50 |
18:05 | 18:10 |
18:35 | 18:30 |
19:05 | 19:20 |
*北京路線バス情報サイト「beijing.8684」(https://beijing.8684.cn/)のデータに基づく。*途中停留所の正確な通過時刻は不明。表示の通過見込時刻はあくまで目安である。 懐柔北大街=於家園発車時刻+5分 慕田峪環島=鉄礦峪/洞台発車時刻+20分*H23路以外の系統の運行本数は、各2~3便/日。
注意点
★運賃支払方法について
運賃の支払いは、北京市の交通カード「一卡通」の利用を強く薦める。バス運賃が半額になる上、支払方法も日本のSuica・ICOCA等と同じようにセンサーにタッチするだけなので非常に便利。
★懐柔北大街から慕田峪長城までの便について
「懐柔北大街」から慕田峪方面へのバスは、日中概ね30~40分間隔の模様。ただし、1時間以上間隔が開く時間帯があるので注意が必要。
”H24”のみ、リフト・ロープウェイ乗り場近くの「慕田峪長城(慕田峪长城)」まで乗り入れる。ただし1日2往復のみの運行(「懐柔北大街」発8:45頃、15:50頃)。
”H24”以外の路線は、「慕田峪環島(慕田峪环岛)」で下車後、リフト・ロープウェイ乗り場まではシャトルバス(所要5分)に乗るか徒歩で行くことになる。
乗車体験記
916快に乗車
”916快”は、東直門バスターミナルビル「東直門交通枢紐大庁」の1階から発車する。乗り場は案内表示に従って行くと簡単にたどり着いた。
乗り場に着くと、すでにバスは停車していた。乗り場の案内看板には路線番号と停留所、地図が掲出されている。漢字なので日本人はだいだい理解できるが、非漢字圏の人はややわかりにくいだろう。
停車しているバスは、ほぼ満席の様子。バスの前面・側面・後面にも路線番号と行先がきちんと表示されている。
11:33、満席のバスはすぐに発車した。その直後、次発便のバスがプラットホームに入線してくる。案内看板には運行時間が記載されているが、発車時刻表の表示は無い。特に発車間隔のオペレーションがなされている様子は無いので、おそらくある程度席が埋まり次第発車するのであろう。
前扉から乗車する。運転席の脇にはカード読み取り装置があり、北京の交通カード「一卡通」をタッチする。
シートは市内路線バスとは異なり、快速路線らしく立派な座席。2-2の4列シートで席数は40席以上ある。高速道路を走るので立客は禁止と思われる。
乗客がどんどん乗車し、ある程度席が埋まった段階で11:39発車。先ほどの先行便発車からまだ6分しかたっていない。
車掌が乗務しない、いわゆる”ワンマンバス”だが、保安係員が1名乗務している。客層はほぼ地元の人と思われる。郊外鉄道がほとんどない北京では、安くて本数が多いバスは中心部と郊外を結ぶ重要な交通手段となっている。
目指す「懐柔北大街」は13個目の停留所。バスはしばらく北京市内をこまめに停車していく。
やがて高速道路「京承高速」に入る。渋滞もなく快調に走行。途中までは片側4車線の立派な高速道路だ。右手には建設中の「京哈高速鉄路」の高架橋が見える。この高速鉄道は2020年完成予定。懐柔にも駅ができるので、将来は慕田峪へのアクセスに利用できるかもしれない。
30分ほどで高速を降りると、すぐに懐柔市街地に入っていく。この路線の終点は、国鉄懐柔駅前にある「懐柔汽車站」。そこまで懐柔市街地中心部を時計回りにぐるっと回って、こまめに停車していく。
車内前方には、次停車の電光掲示がある。やがて「懐柔北大街」が表示されたので、降りる準備をする。
12:46到着。カードリーダーにタッチし降車。上屋もある立派な停留所だ。バスは終点に向けて走り去っていった。
H23に乗車
ここで「慕田峪環島」方面へのバスに乗り換える。逆方向に戻る形なので、道路の反対側に渡る必要がある。幸いバス停のすぐ隣に信号付きの横断歩道がある。
バス停ポールには、路線ごとの詳細な停留所が記載されている。使える路線は、H23,H24,H35,H36,H50,H7の計6路線。前述した通り、このうち本数が最も多いのは”H23”。
幸い、すぐに”H23”のバスがやってきた。時刻は12:47。当然一卡通が使える。時間が中途半端なので空いていると思っていたが、予想に反しほぼ満員。立ちスペースもまともにない状態。
車両は福田製の比較的新しいタイプ。こちらは車掌が乗務している。他に保安要員もいるので、ドライバーを含め3名の乗務員が乗っている。
バスは北西に向かう。片側2車線の道路を快調に走る。停留所の数が多く、こまめに停車していくのでやや時間がかかる。
山が近づき、自然豊かな景色の中を走る。この辺りは自然公園や名勝が点在し、北京近郊の手軽なリゾート地といった雰囲気だ。
13:12到着。巨大な水道橋が目を引く。ここで降りた乗客は3~4名程度。時間がやや遅いこともあるが、中国人でも路線バスを使って観光する人は今や少数派なのかもしれない。
観光センターの様子
バスが走り去っていった方向に少し歩くと、ロータリーが現れる。ここを右手に行くと、すぐに駐車場の入口。ここから慕田峪長城の観光センターに入れる。
チケットを購入。入場料(40元)とシャトルバス乗車券(15元)、ロープウェイ又はリフト乗車券(120元)が基本的なチケット。徒歩で上るなら入場券のみで入れるが健脚向き。
ロープウェイ往復コースはシャトルバス、記念葉書込みのセットで180元。中国の観光地は非常に金がかかる。
なお、手持ちの現金が乏しくなってしまった場合、センター内に中国銀行のATMがあるので、日本のクレジットカードで現金を調達できる。
シャトルバスに乗車
さて、シャトルバスでロープウェイ乗り場へと向かう。シャトルバス乗車場所までは土産物屋や飲食店が並ぶ歩道を3~4分ほど歩かなくてはならない。
シャトルバス乗車時間は5分程度。発車時刻表は掲示が無く、乗客がある程度まとまったら発車する様子。平日午後なので並ぶことなく乗車できた。
バス下車後、バス停から少し坂を登ると右手にリフト乗り場。ここでロープウェイのチケットを出すと追い返される。
ロープウェイに乗車
検票所を過ぎ、ロープウェイ乗り場は更に登った場所にある。やや坂がきついのでお年寄りや車いす利用者は少し厳しいかもしれない。
なお、英語表記は”Cable Car”となっているが、日本で言うところの”ケーブルカー”(鋼索鉄道)でなはく”ロープウェイ”(索道)にあたる。
単線自動循環式普通索道、いわゆる”ゴンドラリフト”。日本の大きなスキー場などでも良く見かけるタイプだ。
乗車時は長蛇の列に並ぶこともなく、あっという間に乗れた。
支柱や搬器の形にどこか見覚えがあると感じたが、製造銘版を見ると”Nippon Cable”とある。日本の大手索道メーカー「日本ケーブル」製だ。
5分ほどで上部駅に到着。老若男女がロープウェーで一気に長城のある稜線まで登れてしまう。こんな時代が来るとは、壁を作った古代中国の人々には決して想像できなかったであろう。
ロープウェイ上部駅から歩いて1~2分で長城に出る。ちょうどハリエンジュ(ニセアカシア)の花が満開で、濃厚な甘い香りが漂っていた。
感想
「慕田峪長城」に今回初めて訪れてみたが、平日とあってか観光客の数が少なく落ち着いて観光ができた。最もメジャーな「八達嶺長城」は混雑の激しさに辟易するので、ここはおすすめである。ロープウェイが安全・安心な日本製なのもポイント高い。
使いにくいと思われがちな中国の路線バス。日本人の場合漢字の意味がなんとなく分かるので、コツさえつかんでしまえばそれほど難易度は高くない。
逆に、北京市内のバス路線は政府系の「北京公交」により一元運営されているので、事業者が乱立しそれぞれ勝手なことをやっている日本の路線バスよりはるかにわかりやすい。
バスの車両も近代化が進み、車内の快適性も悪くはない。20年以上前の話、ボロボロのバスで八達嶺に向かう途中、バスが故障してしまい途方に暮れたのは遠い昔の思い出となった。
難点は、バスのリアルタイムな運行状況がわからないこと。バス停で目的のバスが来るのをひたすら待つのが基本となっている。今後はバスロケーションシステムの導入が望まれる。
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