風光明媚な桂林市内を縦横無尽に走る「公交」(路線バス)。都市鉄道の無い街なので、市民や観光客の重要な足になっています。今回、わずかな時間ですが市内観光を兼ねて乗ってみましたので、その様子をお伝えします。
はじめに
桂林の市内路線バスは、主に国有企業の「桂林市公共交通集团有限公司」により運営されている。中国の路線バス情報サイト「8684公交」によると、2019年10月現在の路線数は、観光路線を含め76路線にのぼる。
車両数は、「百度百科」によると2019年現在922台ある。そのうち723台(約78%)が省エネ車両である(LNG車264台、純電動車330台、電動ハイブリッド車129台)。一部路線では二階建てバスが使用されている。
なお、市内と桂林両江国際空港を結ぶ空港バス(机场巴士)は3路線あるが、こちらは空港会社「桂林両江国際機場公司」が運営している。
旅行記
西城路口~桂林駅
市内中心部、目抜き通り「中山中路」にある「西城路口」停留所からスタート。とりあえず国鉄桂林駅に行ってみることにする。
案内板には、各路線の停留所名(英語表記付)が細かく表示されている。経路となる道路名も表示されているので、地図と照らし合わせることで大よその経路がわかる。
目抜き通りだけあり、バスは頻繁にやってくる。路線番号はバス前面に数字が表示されているので、目的の系統が来るまで待つ。
何台かバスを見送り、空いているバスが来たので乗り込む。桂林站経由園林植物園行きの16路だ。
乗り方は簡単。前乗り後降り運賃先払い方式で、乗車時に運転席横の運賃箱に現金を投入する。”もぎり式”の乗車券があり、領収証代わりになる。
運賃は大人2元。両替機は無いので、お釣りが必要だと乗車を断られる可能性がある。なお、ICカード・QRコードの読み取り機があり、”銀聯”マークが表示されているが日本発行のカードが使えるかどうかは不明。
車内は一般的な路線タイプ。オレンジ色のシートは優先席だ。
一部の車両を除き、車内には電光表示器が設置されていない。降りるべき停留所が分かりにくいときは、地図で現在位置を確かめながら乗車する必要がある。
5分程で「桂林站」停留所に到着。駅まで徒歩2~3分の場所にある。
桂林駅の様子
ここ桂林駅は、湖南省の衡陽東駅(京広高速線接続駅)から広西チワン族自治区の柳州を結ぶ高速鉄道路線「衡柳線」の駅。遠く北京、上海に向かう高速列車も発車する。メインの駅舎は現在改装工事中。
なお、ベトナム国境に向かうかつての動脈、在来線の「湘桂線」は、現在は貨物輸送がメインの路線となっている。
さて、ここから再び市内中心部方面へと戻ることにする。乗り場は駅前の中山南路を挟んだ反対側にある。
列車降車口の目の前に地下道があるので、ここをくぐる。エレベーターやエスカレーターは無いので、大きな荷物を持っている時は難儀しそうだ。
左側の階段を昇り、地下道を出たすぐの場所にバス乗り場がある。なお、歩道とプラットホームの間には二輪車専用道が走っており、バイクや自転車が高速で駆け抜けていくので注意が必要。
中心部の「十字街」に向かう路線は、3路・10路・11路・16路・22路(楽郡路口)・91路・99路・100路・観光2号線。このうち16路・91路は少し離れた桂林飯店前の「桂林站前広場」乗り場から発車する。
11路と100路は二階建てバスが使用されている。二階からの眺めが良さそうだ。
見ていると、バスの車体は全面広告となっているので塗色はバラバラだ。姉妹都市熊本にちなんだ特別ラッピング車もあるようだが、残念ながら今回は見かけることは無かった。
桂林駅~宝賢橋~十字街
しばらくして22路のバスがやってきた。この路線は中山中路からはやや外れた経路を通る。終点は北郊にある「桂林西駅」、貴州省貴陽と広州を結ぶ高速鉄道「貴広客専線」の駅だ。
面白そうなので乗ってみることにした。バスは中山南路から南環路に入り、東側に迂回する形で進んでいく。
桂林は、「両江四湖」と呼ばれる2つの川と4つの湖に囲まれた街。水辺の景色が美しい。また、特有の”タワーカルスト”も間近に眺められるのでバスの車窓も楽しい。
バスはやがて中山中路に入るが、すぐに左折して桂湖のほとりに出る。景色の良い場所に停留所があったので、ここで降りてみる。
ここは「宝賢橋」という停留所。上家も無い小さなバス停だ。
バス停の目の前には桂湖が広がっている。湖畔は遊歩道となっており、ウォーキングを楽しむ市民が多い。
ここは22路・30路・89路の3路線のみの停留所。各路線の乗り場はやや離れている。
ここはバスの本数が多くないので、すぐ近くを走る中山中路に出る。道路を渡ると、明代の城跡「靖江王城」の城壁が見える。
城壁に沿って観光歩行街が整備されている。案内板には”ビフォー・アフター”の写真が掲示されていた。
近くの「鳳北路口」停留所からバスに乗車し、「十字街」に向かう。
十字街~七星公園
「十字街」は中山中路と解放東・西路が交差する交通の要衝。このあたりは桂林市で最もにぎやかな場所だ。バス乗り場は交差点の周辺に数ヵ所点在している。
道路の下には地下街があり、買い物を楽しむ家族連れや若者の姿が多い。
ここから、漓江の対岸にある「七星公園」に行ってみることにする。「十字街(解放西路)」停留所からバスに乗車。
真ん中の車線に停車したまま客扱いするバスも。ずいぶん強引なやり方だ。日本なら絶対に許されないであろう。
七星公園方面に行く25路のバスがやってきた。こちらはまともな停車位置に停車。
車内には路線案内図が掲出されている。乗り継げる路線番号も表示されており分かりやすい。
しばらくして、漓江に架かる解放橋を渡り対岸へ。このあたりは桂林市内観光のハイライト「象山景区」。以前来たことがあるので今回はパス。
8分ほどで「七星公園」停留所に到着。この停留所も方面により乗り場が分かれている様子。ここから公園入口までは徒歩4分ほど。
七星公園は、敷地面積134.7㎡の非常に大きな公園。園内に7つの山があることから名付けられたとのこと。
鍾乳洞や古い仏教寺院など見どころも多いが、今回は残念ながら時間も限られているので、さっと通過するのみにした。
入園料は大人55元とやや高いが、園内は市民の憩いの場となっている。今日は日曜日とあってか、結構賑わっていた。
公園の入口は4箇所あり、通り抜けることも可能。今回は花橋大門から入り、駱駝大門で出場した。
七星公園~解放橋~西城路口
駱駝大門から5分ほど歩くと、「竜隠路」という停留所があった。ここは14路・30路・204路の3路線が通る。十字街に向かう路線は14路と30路。
すぐに14路のバスがやってきた。
十字街の一つ手前「解放橋」で下車する。靖江王城の最寄停留所で、桂林で一番賑やかな歩行街、「正陽路歩行街」にも近い。
城の周辺は近年再開発された様子。以前来た時に比べ、その変わりように驚いてしまった。
さて、次の予定まで時間も無くなってきたので、最初の出発地「西城路口」まで戻ることにする。
「解放橋」停留所は写真の通り非常に混雑している。桂林市内で最も乗降客数が多い停留所かもしれない。発着する路線数も多い。
二階建て11路のバスがやってきた。せっかくなので二階の最前方の席に座る。
眺めは抜群。桂林観光にはぜひおすすめしたい。
6分ほどで「西城路口」に到着。ここで路線バスの旅は終了となった。
感想
限られた時間の中での、駆け足でのミニトリップであった。ツアー参加であれば貸切バスでの市内観光となるであろうが、自由な行程で、また市民の生活を垣間見ながらの路線バスの旅も楽しい。
乗り方さえ覚えてしまえば、使いこなすのはそれほど難しくはない。運賃も安いので1区間でも試しに乗ってみることをお勧めする。ただし小銭の用意は忘れずに。
経路を一覧できる路線図があればなお便利であるが、残念ながら見つけることができなかった。これは中国の路線バス全般に言えることであるが、バス停の案内表示も地名オンリーで土地勘が無ければ分かりにくい。この点はぜひ改善して頂きたい。
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