海が見える路線バスシリーズ第2弾。今回は千葉県房総半島の先端部、館山・白浜・鴨川地域で路線バス1周乗り継ぎ旅をしました。その3として鴨川から金谷港までバス、金谷港から久里浜港まで東京湾フェリーに乗った様子をお伝えします。
乗車船データ
項目 | データ1 | データ2 |
---|---|---|
事業者 | 鴨川日東バス | 東京湾フェリー |
路線 | 金谷線 | 久里浜金谷航路 |
乗車駅 | 鴨川駅前 | 金谷港 |
降車駅 | 東京湾フェリー(金谷港) | 久里浜港 |
出発時刻 | 予定15:25 実際15:26 | 予定16:30 実際16:30 |
到着時刻 | 予定16:20 実際16:26 | 予定17:10 実際17:07 |
所要時間 | 1時間 | 37分 |
運賃 | 870円 | 720円 |
旅の記録
鴨川日東バス本社営業所の様子
安房鴨川駅東口前にある鴨川日東バスの本社営業所。表には1994年の分社化前の名称、「日東交通 鴨川営業所」と書かれている。
安房鴨川駅のバス乗り場は方向により分散されており、やや分かりにくい状況。東京・千葉方面への高速バスと一部の一般路線バスは西口ロータリー、鴨川市内線、これから乗車する金谷線などの多くの一般路線バスは東口周辺の各バス乗り場を発着する。
この東口は駅前広場が大変狭く雑多な雰囲気。駅から見ると営業所建物に小さな看板が掲げてあるのみでバス乗り場が全く見えない。初めての旅行客にはわかりにくい。
営業所内には出札窓口と待合所が設けられており、昔ながらのバス営業所といった風情。営業所前には屋根が無い”車庫”と給油所が設けられている。
安房鴨川駅から東京湾フェリー金谷港まで路線バスに乗車
金谷線の「東京湾フェリー」行バスは15:25の発車。乗り場は営業所脇の”Aのりば”。発車5分前にバスが入線してきた。バスは中型のエルガミオ。側面には”急行”と表示されている。
後乗り前降り、運賃後払い方式で、この路線はSuica等の交通系IC乗車券が使える。
鴨川と金谷「東京湾フェリー」を結ぶ便は1日4往復のみ。途中の「平塚入口」までは長狭線と同じ経路を通り、時刻表上でも同一路線として案内されている。
15:26定刻よりやや遅れて発車。乗客は15名程度か。バスは鴨川市街を出て、県道34号線長狭街道を西へ進む。
バスはしばらく加茂川沿いの田園地帯を走る。渋滞もなく流れはスムーズだ。地元の方と思われる乗客が各バス停で下車していく。
旧長狭町の中心部を過ぎると、だんだん山が迫ってくる。途中の釜沼というバス停から徒歩20分ほどで、絶景ポイントの「大山千枚田」に行けるとのこと。鴨川からの往復割引乗車券も発売されている。
この路線、鉄道がないのに停留所名に”駅”と付くバス停が3箇所(主基駅、吉尾駅、金束駅)ある。かつて国鉄と連絡運輸を行っていたバス路線にこのような例が多い。
その一つ、「金束駅」を過ぎると峠越えが始まる。サミットを超えると富津市に入った。この辺りは山中地区といい、文字通り山の中の隠れ里といった雰囲気。このあたりまで来ると乗客は数名程度となる。
再び小さな峠を越えると鋸南町に入る。朝通過した館山自動車道をくぐると、保田の市街地だ。久々に海が見える。
ここから金谷の港まで、鋸山のふもとを海沿いに走る。東京湾の景色が美しい区間。
内房線の浜金谷駅前を過ぎると、ほどなくして金谷港東京湾フェリー乗り場に到着する。途中の乗降に時間を要したのか定刻より6分遅れの16:26着。
運転士がフェリー乗り継ぎの心配をしてくれた。次の久里浜行は16:30発。駆け足で目の前のフェリーターミナルへと向かう。
東京湾フェリーに乗船
きっぷ売場で久里浜行の乗船券を購入。まだ間に合うとのこと。土産物が並ぶ館内を抜けて徒歩乗船口に向かう。16:28乗船。バスを降りてから僅か2分の出来事。
乗船した船は「しらはま丸」。船内は座席が4割程度埋まっている状況。平日にもかかわらずゴルフ帰りの団体客でにぎわっている。荷物置き場はキャディバッグが大量に並んでいた。
16:30定刻に出航。さらば房総半島。
この東京湾フェリーは金谷と久里浜の間を40分で結ぶ。自動車の航送も可能だ。便数はカレンダーにより異なり、平日は12便ほどある。アクアラインができた現在、東京湾を横断する唯一の定期航路だ。
船内は4層になっており、出入り口がある車両甲板の上に、2階建ての客室甲板と遊歩甲板(展望デッキ)がある。
上部客室甲板には情報カウンターと売店・喫茶のコーナーがある。短距離航路にしては設備が整っている感じ。ここの名物は”いわしバーグ”と”横須賀カリーパン”。
湾内なので揺れもなく、久里浜に向けて順調に進んでいく。展望デッキに上がると潮風が気持ちいい。
三浦半島が近づいてくる。港内に入り、左に回り込むとフェリー発着場が見えてくる。
17:07久里浜港に到着。接岸するとすぐにタラップが架けられ、下船となった。
久里浜港フェリー発着場から京急久里浜駅までは京浜急行のバスが接続している。所要時間は10分程度だが道路事情により多少前後する。
感想
東京からバスで2時間半、わずか2,500円程度で行ける南国リゾート。今回、久々に房総半島の旅を楽しんだが、海の自然や海鮮料理も楽しめる首都圏からの手軽な日帰り旅行先として十分おすすめできる。
ただ、平日ということもあっただろうが、公共交通機関で訪れる観光客がほとんどいないことが気になった。当地域を訪問する観光客の8~9割がマイカー・レンタカーの利用であるという調査結果もある。東京からほぼ同距離にある箱根が約5割であるのに比べると、かなり高い比率である。
この原因の一つに、鉄道の弱体化と鉄道とバスの連携不足が挙げられると思う。特に内房線は衰退著しく、最盛期には12往復あった東京・館山間の特急列車は壊滅してしまった。箱根では小田急がロマンスカーを幹に、登山鉄道・バス・航路を強力に取りまとめているのに比べると、大きな違いがある。
株式会社ジープラスメディアが発表した「2019年外国人が訪れるべき日本の観光地ランキング」によると、外国人の注目旅行先として房総半島が全国9位にランクインされている。しかし、今回の旅では外国人旅行客の姿は皆無であった。自動車による移動が主体の観光地は、いくら魅力があっても外国人の観光には不適である。
インバウンドの課題としていつもあげられるのは公共交通機関、特にバスの使いにくさ。事業者が乱立し日本人にも分かりにくいのに、勝手のわからない外国人にとってはバスで旅をすることは至難の業だ。
当地に限らず日本の公共交通の問題点として、モード間の連携、事業者間の連携が不足しているので、事業者ごとの取り組みは良くても、普遍性が要求される交通ネットワーク総体として見ると、きわめて利便性が悪くなっている。個別の最適が全体の最適の足かせになる典型的な例だ。
外国人にとっての利便性は、当然日本人にとっても旅のしやすさに直結する。少子高齢化で今後マイカー観光が頭打ちとなることを鑑みると、観光振興には公共交通の革新が欠かせないと思う。
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