【2019年1月】鉄道乗車記:香港から広州へ高速列車の旅

2018年秋に開業した、香港と広州を結ぶ高速鉄道に乗ってみました。

乗車した列車
路線 区間 等級/運賃 所要 事業者
機場快線 機場→九龍 100 HKD 22分 香港鉄路
広深港高速鉄道 香港西九龍→広州南 二等/215 RMB 1時間2分 香港鉄路/中国国鉄
はじめに

マカオで1泊したのち、昨日乗った港珠澳大橋シャトルバスに再び乗り、香港国際空港に戻った。

これから機場快線で九龍に行き、2018年9月に開業したばかりの、広深港高速鉄道で広州まで向かうことにする。高速鉄道のチケットは、予約サイト「Trip.com」であらかじめ確保してある。”一国二制度”の香港と中国本土を結ぶ高速鉄道、興味深いこの鉄道に実際に乗り、様子を探ってみたい。

香港国際空港から機場快線に乗車

機場快線は、政府系企業の「香港鉄路有限公司(MTR)」が運営するエアポート鉄道だ。この企業は香港地下鉄や九広鉄路、これから乗る広深港高速鉄道の香港区間をも運営し、まさに香港を代表する交通事業者である。

機場快線のりば

データイム10分間隔で、香港島の中環にある「香港駅」まで24分で結ぶ。これだけ見ると空港アクセスとしては理想的な乗り物であるが、運賃が割高なためか、市場占有率は2016年現在21%程度で、2001年の27%から減少しているとのこと。香港駅まで 110 HKD=約1,550日本円、九龍駅まで 100 HKD=約1,400日本円(オクトパスカードを使用した大人片道運賃)なので、確かに高い。ちなみに、エアポートバスA11系統にて中環までの運賃は、40 HKDである。

改札は無い
ホーム

この路線、空港最寄りの「機場駅」から1kmほど北西にある「博覧館駅」が終点。列車はそこで折り返してくる。この機場駅には改札が無く、いきなりプラットホームが現れる。都市鉄道の駅としては珍しい形だが、無札・無入場記録=機場駅乗車と見做され、運賃が計算されるのだろう。

車内は方向固定クロスシートが並ぶ。全席自由席で、やはり人気は進行方向に向かうシート。出入口は1両2扉で、入ってすぐ両側に荷物棚スペースがある。いかにも空港鉄道らしい車輛だ。

機場快線車内

定刻に発車し快調に速度を上げる。最高速度は135km/hだが揺れは少ない。標準軌1435mmの軌道上を滑らかに進む。なお、途中から同じ線路上を、「東涌線」という別の系統の列車が走る。機場快線が急行で、東涌線が各駅停車といった役割分担である。

22分ほどで「九龍駅」に到着。この駅には改札があり、もちろんオクトパスカードが使える。機場駅からの運賃 100 HKDが差し引かれた。運賃体系が異なる東涌線とは改札が別になっている。

九龍駅ホーム
九龍駅機場快線改札
香港西九龍駅の様子

機場快線の九龍駅に隣接して、高速鉄道の「香港西九龍駅」がある。案内看板に従って、ショッピングモールの中を進む。

案内図

しばらく進むと、高速鉄路と表示された連絡歩道橋の入口に着く。これを渡ると香港西九龍駅だ。連絡橋からは中環の高層ビル群が望める。

連絡橋入口
連絡橋からの眺め
香港西九龍駅舎外観

この高速鉄道、正式には香港側が「広深港高速線香港段」、本土側が「広深港高速線広深段」という路線により構成され、前者は香港鉄路(MTR)が管理し、後者は「中国鉄路広州局集団公司」が管理する、いわゆる中国国鉄の一部となっている。

駅舎に入り、地下1階まで降りると、チケットコンコース(票務大堂)に到着。ここで予約しておいた高速列車の乗車券を発券してもらわなくてはならない。

かつての中国の鉄道は、きっぷ売り場は大行列で、何十分も並んだ末ようやく順番になったとしても、窓口係員から「没有(メイヨウ)」と言われ目的の席は売り切れだった、という状況であった。今は列車本数も増え、ネット予約で確実に乗車できるようになっている。時代は変わった。

きっぷ売り場

予約しておいた席を発券してもらうことを”取票”という。予約番号と身分証明書類(外国人はパスポート)の呈示が必要で、予約時に登録した名前、パスポート番号と同じでないと乗車できない仕組みだ。発券は発車時刻の45分前までに行う必要があると記されている。なお、取票に際しては、きっぷの値段により 10~30 HKDの手数料がかかる。また、構内には自動券売機もあるが、残念ながら外国人は発券できない。

発券の際、予約した席が窓側かどうか、変更はできるか係員に尋ねたら、残念ながら窓側ではなく、すでに売り切れていて変更はできないとのこと。平日昼間の列車だが乗車率は高そうだ。

構内には発車時刻表と運賃表が掲出されている。時刻表は大きく分けて深圳、広州までの短距離(短途)列車と、広州以遠の内地へ向かう長距離(長途)列車に分かれている。短距離列車は高頻度で運転されているが、途中の福田、深圳北止まりの列車が半分以上を占め、広州南行は2~3本/時程度。長距離列車の行先は潮汕、北京西、昆明南、厦門、長沙南、上海虹橋である。遠く北京西駅に向かう列車は約9時間もの長い道のりである。

香港西九龍駅の発車時刻表

運賃は、二等・一等・特等・商務の4クラス制で、一番安い二等でも広州南駅まで 215 人民元=約 3,500 日本円。中国の鉄道としてはかなり割高感がある。

香港西九龍駅からの運賃表

これから乗車する列車、G6508次、広州南行きは11:49の発車。ボーディングタイムは15分前の11:34と表示されている。きっぷの買い方といい、乗り方といい、まるで飛行機のような感じだ。

発車まで時間があるので、少し構内を散策する。駅舎建物の中心部は吹き抜け構造になっており、開放感がある。構内は清潔で洗練されており、なんとなく埃っぽい「中国の駅」という感じはしない。もちろんここはまだ香港であり、MTRが管理しているのである意味当然かもしれないが。

発車標

さて、乗り場に向かうことにする。この先の手続きを見こし、発車1時間前位には移動開始したい。「離港」という案内サインが乗り場への目印。ここで乗車券の確認があり、保安検査が行われる。地下3階に降りると、いよいよ”一国二制度”を象徴する部分、出入境エリアだ。

この駅の最大の特徴は、香港の中心部に「中国本土エリア」が存在すること。列車に乗るためには、まず香港を出境し、次いで中国本土に入境する必要がある。当然、本土側のイミグレーション(辺防検査站)が駅構内に存在する。

免税店が並ぶ出境後エリア(奥が本土側のイミグレ)

本土に入境すると出発コンコースに出る。ベンチはあるが、乗車を待つ乗客で一杯のため、ほとんど座る場所がない。なお、商務車(ビジネスクラス)の乗客には専用のラウンジがある。

乗り場は地下4階にある。ホームは9面、線路は10本もある大きな駅である。ちなみに東海道新幹線の東京駅は3面6線。日本と比較し列車本数の割に設備が巨大なのが中国のやり方である。運転系統が複雑であり、運行も日本に比べ大雑把、また列車別改札を行っていることがその主な理由であると思われる。

香港から広州へ広深港高速鉄道に乗車

G6508次の乗り場は5、6番ホーム。改札口には列ができていた。予定より少し早い11:30に改札が始まった。発車の5分前には改札が終了してしまうので、乗り遅れないよう注意が必要。

5番線に停車中のG6508次
車内
回転リクライニングシート

早速乗り込む。今回乗る二等車は、座席は日本の新幹線普通車と同様の2-3列回転クロスシートで、もちろんリクライニングする。モケットの色は違うが、形はJR東日本のE2系の座席に似ている。

この車両の形式は「復興号 CR400AF-A」。JR東日本E2系1000番台を源流に持つ、中国国鉄最新型の高速電車だ。側面の外観はドイツのICEを思わせるデザインである。

11:48、定刻より1分ほど早く発車。日本だと「早発」扱いになり、法令違反となる事象であるが、こちらでは日常茶飯事。すべての旅客が乗車完了し、進路が開通していればOK、ということだろうか。

香港西九龍発車時の乗車率は10%程度。時間帯が悪いのか、思ったより空いている。列車は順調に走るが、香港区域内は全てトンネルで最高速度も200km/hに制限されている。この列車の最初の停車駅、深圳北駅手前でようやく地上に出る。

予想通り深圳北駅にて大勢の旅客が乗ってきた。ほぼ満席状態。3列シートの真ん中なので、ややバツが悪い。ここから地上区間が多くなり速度も上昇、最高速度は300km/hに達する。中国の高速鉄道には何度も乗ったが、乗り心地の良さをいつも感じる。大陸の平野を突っ走る線形の良さがうらやましい。

列車は定刻よりやや早い、12:50に広州南駅12番線に到着した。ここは5つの高速鉄道線が集まる中国有数の大ジャンクション。構内の巨大さに度肝を抜かれる。

駅名標
広州南に到着したG6508次

ひたすら巨大な広州南駅
さまざまな列車が行き交う
広州南駅到着通路

この広州南駅は、広州市の中心部から南に約17kmの場所に位置する、2010年開業の新しい駅である。地下鉄2路線(2号線、7号線)が乗り入れており、市の中心部へは2号線が結んでいる。

感想

全世界から注目を集めるこの高速鉄道。やはり話題の中心は、”一国二制度”を貫く本鉄道の特殊性であろう。政治的な意味での是非はさておき、香港側の駅にて本土の出入境手続きを行うことは、利便性からみるとやむを得ない措置であると思う。仮に本土側の手続きを本土の駅で行うとすると、本土側の停車駅全駅にイミグレーションを設置しなければならなくなってしまう。これでは多彩な運転系統は実現できない。

また、現状の課題としては、広州側のアクセスの悪さが挙げられる。広州南駅から市の中心部までは地下鉄で約30分ほど要するため、乗り換えや香港側の手続きの時間も含めると、高速鉄道経由のトータル所要時間は3時間近くかかる。一方、羅湖経由の在来線を利用した場合は、中心部に近い広州駅又は広州東駅から乗車できるため、広州中心部とのトータル所要時間は高速鉄道経由とさほど変わらず、移動コストははるかに安い(このルートは香港への帰途で使ってみたので、項を改めて記す)。このあたりが、香港出発時の乗車率の悪さに反映されているのだと思う。

しかし、人口集中による大都市郊外の都市化が進む中国。建設当時は農村地帯の真ん中にあった広州南駅も、周辺開発が進展している。近い将来、駅周辺には高層ビルが林立する状況になっているかもしれない。

この高速鉄道が真価を発揮するのは、もう少し先のことであろう。今後の行方に注目していきたい。

関連リンク

香港鉄路(MTR) http://www.mtr.com.hk/
中国国鉄 https://www.12306.cn/
中国鉄道予約 Trip.com https://jp.trip.com/

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