韓国屈指のローカル鉄道路線「慶北線」は、慶尚北道金泉市から同道栄州市に至る韓国鉄道公社の路線で、総延長は115.0km、韓国中部ののどかな農村地帯を走っていきます。
今回は、この慶北線を走る観光列車「慶北ナドゥリ列車」に乗車、そのまま韓国屈指の山岳鉄道路線である嶺東線に乗車しました。
乗車データ
乗車区間 | 東大邱-鉄岩 | 鉄岩-東海 | 東海-清凉里 | 事業者 | 韓国鉄道公社 | 韓国鉄道公社 | 韓国鉄道公社 | 列車番号 | ムグンファ4501 | ムグンファ1682 | ムグンファ1642 | 車両形式 | 9501系気動車 | 客車 | 客車 |
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はじめに
慶尚北道金泉市と同道栄州市を結ぶ慶北線は、韓国屈指のローカル線として知られているが、週末限定で、この慶北線を通る観光列車「慶北ナドゥリ列車」が運転されている。
この”ナドゥリ”とは日本語で”お出かけ”という意味だそうで、慶尚北道の鉄道観光活性化のために韓国鉄道公社と慶尚北道の提携により運転している。運転区間は東大邱~汾川(または鉄岩)で、東大邱から金泉までは京釜線、金泉から栄州までは慶北線、その先汾川まで風光明媚な嶺東線に乗り入れる、乗り鉄にはうってつけの列車だ。
乗車記
東大邱から「慶北ナドゥリ列車」で鉄岩へ
東大邱駅1番線には、既に色鮮やかなディーゼルカーが停まっていた。これから乗車するムグンファ号(急行列車に相当)「慶北ナドゥリ列車」だ。
列車は4両編成、本来通勤列車用の気動車であったが、一部の編成は内装を改造の上、急行に相当するムグンファ号の車両として使用されている。
乗車券は、あらかじめネットで予約しておいた。クレジットカードがあればKORAIL公式サイトで日本語にて簡単に予約が可能である。ただし、シートマップによる座席の選択は不可能なのが残念なところ。韓国語サイトでは可能なようだが、こちらは韓国国外発行のクレジットカードは使えない。
列車は定刻に東大邱を発車、金泉までは複線電化の京釜線を快走する。東大邱発車時の乗車率は7割程度とまずまずだが、観光客より区間利用客が多い様子だ。途中の亀尾、金泉で半数以上の乗客が下車してしまった。
金泉から、いよいよ慶北線に入る。単線非電化の正にローカル線だ。韓国の鉄道は近年、線路付け替えによる複線電化が進展し、このようなのどかな鉄路は少なくなってきた。金泉を発車すると程なく小さな峠を越え、尚州の盆地へと入っていく。
この列車にはカフェがある。韓国の長距離列車にはこのような供食設備がまだまだ残っているのがうれしい。車輛の4分の1程度の狭いスペースだが、女性の店員さんが2名で接客していた。ホットコーヒーを購入、コーヒーマシンで淹れたおいしいレギュラーコーヒーだ。
慶北線最大の駅、店村で多くの乗客が下車した。週末の観光列車とはいえ、地元住民の生活列車でもあるようだ。ここで乗車率は3割程度になってしまった。列車はひたすらのどかな田園風景の中を進む。
乗車中に江陵での列車脱線事故の情報を知る。今日はこのまま嶺東線で江陵に出て、KTX江陵線(京江線)でソウルに向かう予定であったが、情報を確認する限りどうも今日中の復旧は無理な様子。
もうすぐ分岐点の栄州に到着してしまうが、このまま江陵方面に向かう嶺東線を進むか、大事を取って中央線に乗り換えてソウルに直行するか迷う。KORAILのサイトによると、KTXだけではなく江陵発着の嶺東線ムグンファ号も一部列車が運休との情報が。今後もし江陵発着の列車が全面運休となれば、嶺東線のみならずエスケープルートの太白線も大きな影響を受けるのは必至で、下手をすれば今日中にソウルに入ることができなくなる恐れが。。。
迷っているうちに栄州に着いてしまった。降りようかとも思ったが、この旅の最大の目的はこの慶北線・嶺東線の乗車であったので、できれば乗り続けたい。今のところ、KORAIL予約サイトでは太白線経由のソウル清凉里行きムグンファ号に空席があり、運休の情報も出ていない。意を決してこのまま乗り続けることにし、太白線ムグンファを予約した。
嶺東線に入ると、列車はいよいよ朝鮮半島の背骨、太白山脈に挑んでいく。川沿いに右へ左へカーブが続く。景色が美しいので、この区間は観光路線化されており、ソウルからも直通の観光列車が乗り入れてくる。
山間の小駅、汾川に到着した。本来この列車はここが終着駅だが、今日はこの先の鉄岩まで延長運転となっている。30分程度停車時間があるので、駅構内を散策してみる。
晴れていはいるが、風が強いのでかなり寒い。殆どの乗客も一旦下車したが、寒すぎるので駅舎の中のストーブに人だかりができていた。駅舎は木造だがきれいに整備されており、数名の駅職員が勤務している。
ここでソウルから来た後続の観光列車が先行する。日立製のヌリロ号用電車だ。この嶺東線は全線単線だが電化されており、電気機関車や電車が使用されている。
汾川から鉄岩までが、白頭大幹峡谷と称される車窓のハイライト区間である。この区間のみ乗車する観光客も多く、「V-train」という愛称が付けられた臨時の区間列車も運転される。
列車は定刻に終着駅鉄岩に着いた。
鉄岩から東海へ
ここから後続のムグンファ1682列車を予約してあるが、今のところ運休の情報は入っていない。先ほど予約した太白線経由清凉里行きムグンファも所定に走るようなので、一安心だ。
ここ鉄岩は、石炭の採掘で栄えた町だそうで、炭鉱歴史村として一帯が観光地化されている。この駅自体も日本統治時代の1940年に石炭の搬出目的で造られ、現在も貨物列車が発着している。広い構内がこの駅の重要性を物語っている。きっぷ売り場は一時期閉鎖されていたが、近年の観光客増加により、発券業務が復活されたとのこと。
しばらくして、江陵行きムグンファの案内放送があった。寒風の1番線ホームで待つことしばし、約8分遅れでやってきた。終点江陵まで予約済であったが、途中ですれ違う清凉里行きに乗り換えるため、東海で下車する。
鉄岩を出て、太白線が合流すると有名な山越え区間となる。以前、ソウルから太白線経由で江陵まで乗り通したことがあるが、その時はまだ2段スイッチバックが健在であった。現在は新線に付け替えられ、ループ線のトンネルで勾配をしのいでいる。
列車は快調に山を駆け下り、日本海沿いの街、東海に到着した。東海とは、日本海の韓国における呼称にちなんでおり、市の名前になっている。
東海からソウルへ
ここから、折り返してソウル清凉里に向かう。駅の待合室では今朝発生した事故のニュースがテレビで流れていた。思ったより大きな事故であったようだ。
無事に列車がやってきた。清凉里まで5時間以上かかるので、少し奮発して特室(日本のグリーン車に相当)にした。22,100ウォン、日本円で約2,300円程度なので、かなり割安だ。
列車は再び太白山脈を越え、暗闇の中ソウルへとひた走る。
22時20分、中央線のターミナル清凉里駅に到着した。予定より大分遅れたが、何とかソウルにたどり着けてよかった。もう遅いのですぐにホテルに向かう。明日は帰国だ。
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