ベトナム北部、中国との国境の街ラオカイから、少数民族が暮らす高原都市サパまで、公共の路線バスで行くことができます。
今回、年末年始をサパで過ごすため、ラオカイ駅からサパまで往復しました。バスの乗り方、車内の様子や車窓について詳しくお伝えします。また、国境とラオカイ駅間の市内路線バスも利用してみましたので、あわせてご紹介します。
基本情報
ラオカイ省が管理する公共路線バスは、同省の公式サイトによると、2020年1月現在ラオカイ市内系統2路線とサパ方面系統2路線の4路線が運行されている。
各路線の概要は以下の通り(2020年1月現在の情報)。
ラオカイ市内 03系統
国境近くのトゥオン寺院から国境ゲート前、ラオカイ駅前、フォーモイ橋を渡りロータリー交差点を経由して市街南東部のラオカイ総合病院を結ぶ路線。
運行本数は平日22往復、土休日11往復。運賃は1万ドン。日中30~60分に1本(土休日は1~2時間に1本)程度と本数は多くないが、国境~ラオカイ駅間の移動に利用できる。
参考までに、ラオカイ省公式サイトに掲載の時刻表は以下の通り(2019年1月4日付の情報)。
表 03系統 時刻表
トゥオン寺院発 | 総合病院発 | ||
---|---|---|---|
平 日 | 土休日 | 平 日 | 土休日 |
6:00 | 7:00 | 6:00 | 7:00 |
6:15 | 8:00 | 6:15 | 8:00 |
6:45 | 9:00 | 6:45 | 9:00 |
7:00 | 10:00 | 7:00 | 10:00 |
8:00 | 11:00 | 8:00 | 11:00 |
8:30 | 13:00 | 8:30 | 13:00 |
9:00 | 14:00 | 9:00 | 14:00 |
10:00 | 15:00 | 10:00 | 15:00 |
10:30 | 16:00 | 10:30 | 16:00 |
10:45 | 17:00 | 10:45 | 17:00 |
11:15 | 18:00 | 11:15 | 18:00 |
11:45 | 11:45 | ||
12:45 | 12:45 | ||
13:15 | 13:15 | ||
14:00 | 14:00 | ||
14:30 | 14:30 | ||
15:00 | 15:00 | ||
16:00 | 16:00 | ||
16:30 | 16:30 | ||
17:00 | 17:00 | ||
17:30 | 17:30 | ||
18:00 | 18:00 |
※国境における駅方面への推定通過時刻は、トゥオン寺院発車後1~2分※ラオカイ駅における国境方面への推定通過時刻は、総合病院発車後22分(出典:https://laocai.gov.vn/)
ラオカイ市内 04系統
市街南東部にあるラオカイ中央バスターミナルからロータリー交差点、市庁舎前、ラオカイスターホテル前を経由し北西部郊外Bát Xát地区を結ぶ路線。
運行本数は1日22往復だが、内10往復はKim Thành地区折り返しの区間便となっている。運賃は1万ドン。なお、当路線は期間限定の試験運行とのこと。
サパ方面 01系統
ラオカイ駅からラオカイスターホテル前、市庁舎前を経由しサパ市街中心部の教会前を結ぶ路線。
運行本数は1日15往復。日中30~60分に1本程度。運賃は3万ドン(区間利用は1万~1万5千ドン)で所要時間は1時間30分程度。
なお、サパ方面にはラオカイ中央バスターミナルを発着する02系統もあったが、現在は廃止されたとの情報がある。
ラオカイ・サパ間にはこの公共路線バスとは別に、乗り合いタクシー的なミニバスも運転されている。こちらは乗車していないので詳細は分からないが、たまにボッタクリなどのトラブルに遭うという話も聞く。
サパ方面 05系統
サパ教会前とファンシーパン山ロープウェイ駅を結ぶ路線。運行本数は1日21往復。運賃は1万ドン。
国境からラオカイ駅まで03系統に乗車
ラオカイの国境ゲート前からラオカイ駅までは03系統の路線バスが走っている。バス停は出入国管理所建物を背にして左手、Nguyễn Huệ通りにある。
バス停ポールには系統番号”03”の数字と経由する道路名が表示されている。ベトナム語のみの表記なのでやや分かりにくい。
この03系統は国境近くのトゥオン寺院が折り返し地点となっている。ラオカイ省のサイトには寺院の発車時刻が表示されているので、ダイヤ通りならその発車時刻の直後にバスがやってくるだろう。
バス停でしばらく待つと、反対車線に寺院方面へのバスがやってきた。てっきりこれが折り返してくるのかと思ったが、ほぼ入れ違いに駅方面へのバスが到着した。想定の時刻より3~4分ほど早い。
早すぎる到着に少し面食らったが、とりあえず手を挙げてバスを止める。何もしなければそのまま通過してしまう可能性もあるので注意。
バスはベトナム「THACO」製の1ステップ車。ハノイの市内バスでも使われている新しいタイプのバスだ。運行事業者は、ハノイ-サパ間の高速バスも運行する「ハソンハイヴァン(HÀ SƠN HẢI VÂN)」。
バスは前乗り後降り方式。車内はガラガラで車掌が1名乗務している。運賃は均一1万ドンで現金を車掌に支払う。
バスはNguyễn Huệ通りを南下する。途中、右手にはホン川が望める。
左手には中国河口駅から国境を越えてきた狭軌(1000mm)の線路が走っている。かつて昆明・ハノイ間を結ぶ国際旅客列車が通った線路だが現在は貨物列車が走るのみ。
国境から5分ほどでラオカイ駅前に到着した。バスは駅前広場の中には入らず、Nguyễn Huệ通りのバス停に停車する。
バス停ポールには路線案内表示がある。ここを通る系統として01、02、03の3路線が表示されている。道路反対側の駅前広場前には、国境、サパ方面へのバス停があり、各路線の発車時刻が記載されている。
ラオカイ駅からサパまで01系統に乗車
ここから01系統に乗り換えてサパを目指す。乗り場は駅舎を背にして駅前広場左手、ティエンハイホテルの目の前にある。なお、ラオカイ駅前のバス停は”GA Phố Mới”とも呼ばれている。
既にマイクロバスが1台停車していた。乗り場には立派な時刻表が掲出されている。しかし、ここに記載されている時刻はラオカイ省サイトの時刻表とは違い本数もかなり多い。曜日や季節にかかわらずに、この看板に記載の便がすべて運行されるかどうかは疑わしい。
バスの側面にも時刻や運賃が掲示されている。どうやらこの掲示が最も信頼性が高そうだ。
バスはヒュンダイ製小型バス「County Limousine」 。車内は概ね清潔であるが、一部シート座面が破れてしまっていた。運行事業者は「ラオカイ交通(Công Ty Cổ Phần Vận Tải Lào Cai)」。
乗車したバスは定刻に発車。この時点では空席が目立ち、逆に人よりも荷物の方が多いかもしれない。正規の取り扱いなのか便宜なのかは不明だが、車内には託送荷物が積み込まれている。いわゆる”貨客混載”バスだ。
乗務員は運転手と車掌が1名ずつ。制服を着用していないので乗務員なのか客なのか判別がつきにくい。
ラオカイ駅を出て、Nguyễn Huệ通りを国境方面に向けて北上する。国境の手前で左折し、ホン川に架かるコックレウ橋を渡る。
ラオカイスターホテル前のロータリーを左折、目抜き通りのHoàng Liên通りを南下する。
途中、バス停でない場所でも手を挙げてバスを止める乗客も多い。フリー乗降制なのであろうか。
立派な市庁舎の前を通過すると、バスはHoàng Liên通りを離れ、サパに向かう国道4D号線の山岳区間へと入っていく。この時点で車内は満席に近くなった。客層はほぼ地元の人と思われる。
Hoàng Liên通りから右折した所でしばらく停車。ここで車掌が運賃を徴収する。ラオカイからサパまでは3万ドン。なお、掲出されている運賃表にはラオカイ市内およびサパ市内区間(10km)乗車は1万ドン、途中区間の10~20km乗車は1万5千ドンとある。
ラオカイとハノイを結ぶ高速道路の高架下を通過。道路はカーブが多くなり右へ左へ体が揺すられる。
道路は片側1車線で舗装はされている。路面の状態も悪くはない。しかし、超低速の大型貨物車からガンガン飛ばす小型乗用車まで多種多様な速度域の車両が走るので、道路状況はやや混沌としている。当バスも遅いトラックやミニバイクをかなり強引に追い抜いていく。
ラオカイからサパまではほぼ上る一方。高度がグングン上がるにつれて、窓から入る風も冷たくなっていく。
国道沿いに点在する村々で下車する乗客も多い。バス停でない場所でも運転手に声を上げて意思表示をするとバスが停車してくれる。
川の対岸に見える棚田が見事だ。車窓を楽しみたい場合は、サパに向かって進行左手の窓側席がおすすめ。この車窓を見るだけでもサパに行く価値があるかもしれない。
左手にダムが見える場所がラオカイ・サパ間のほぼ中間地点だ。バスは更にエンジンをうならせて勾配を登っていく。
大型バスと頻繁にすれ違う。ハノイとサパを結ぶ高速バスが多数運転されているほか、観光ツアーバスも多いのかもしれない。また、ミニバスも非常に多い。
観光客目当てなのか、沿道では少数民族の衣装を着た人々が焼きとうもろこしなどを売っている。赤い頭巾をかぶっているのは「赤ザオ族」であろうか。
やがて深い谷が開けてきて、高原の雰囲気に変わっていく。
タフィン方面に向かう新しい道路を右に分岐すると、もうサパ市街はすぐだ。
市街に入ると乗客が下車していく。終点の教会前までに半分以上が降りてしまった。やはりこの01系統は観光客輸送よりも地元民の足としての要素が強い。
また、託送荷物を受け取る人が沿道でバスを待っている。荷物受取時に車掌に運賃を支払うシステムのようだ。車掌が商店の中に荷物を送り届けるサービスも見られた。
バスは観光客の多いサパ湖畔のエリアに入っていく。観光客向けのホテルやゲストハウス、レストランなどが建ち並び賑やかだ。
サパ広場をぐるっと回り、終点の教会前バス停に到着した。ラオカイ駅からの所要時間は1時間21分であった。
教会前バス停には待合上家があり、一目でバス停だとわかる。ここにもラオカイ駅前にあったものと同じ案内看板が設置されていた。
なお、ここを発着するはずのファンシーパンロープウェイ駅行05系統の案内は見ることができなかった。
ラオカイ駅への帰路も01系統に乗車した。この便は車掌は乗務せず、運賃も運転手が徴収していた。教会前バス停を定刻に発車し、ラオカイ駅までの所要時間は1時間25分であった。
感想
今回の乗車で一番印象に残ったのは運転の荒さである。特にサパに向かう道路はカーブが多いが、運転手は乗客の乗り心地に気を遣うことは一切ない。車酔いには強い筆者も少し気持ち悪くなってしまたほど。心配な人は酔い止め薬を飲んだ方が良い。
また、ブラインドカーブでの追い越しで正面衝突するのではないかとヒヤヒヤしてしまう場面も。途中で前面が派手に壊れた大型バスとすれ違うこともあった。実際にラオカイ・サパ間の道路は事故が多く、2014年には死者12人のバス転落事故が発生している。
更に、路線案内や時刻などの基本的な情報が不足している点も問題。出されている情報も相互に食い違いが多く、どれが正しい情報なのかも不明。東南アジアの交通全般に言えることだが、正しい情報を分かりやすく伝えるという公共交通の基本中の基本ができていない。
しかし、地元住民の生活を垣間見ることができる路線バスの旅は、単なる観光ツアーでは得られないものもある。運賃も安いので、一度は乗ってみることをおすすめしたい。
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