揖斐駅から桑名駅まで、養老鉄道養老線の旅の様子をお伝えします。途中、養老駅にて途中下車し、「日本の滝百選」に選ばれている「養老の滝」に寄り道をしてみました。
基本情報
養老鉄道養老線は、三重県桑名駅と岐阜県揖斐駅を結ぶ、延長57.5kmのローカル線である。
2007年までは近畿日本鉄道(近鉄)の路線であったが、赤字が続く同線に対する国・自治体からの支援を受け入れるため、運営は近鉄子会社の「養老鉄道株式会社」に移管された。いわゆる”上下分離方式”(施設等の保有と運営を別組織とする方式)が採用されている。
2017年2月に、沿線自治体等が基金を拠出して「一般社団法人養老線管理機構」を設立、それまで近鉄が保有していた同線の土地・施設・車両のうち、施設・車両を機構に無償譲渡、土地のみ有償貸付の上、同機構が養老鉄道に全て無償で貸与するという、やや変則的なスキームにより”公有民営化”が実施された。
近鉄時代の1998年から、車内に自転車をそのままの状態で持ち込める「サイクルトレイン」が実施されるなど、地方ローカル線における利用促進の先進的な取り組みで知られている。
旅行記
揖斐~大垣
谷汲山からの帰路、2019年10月1日運行開始となった「揖斐川町ふれあいバス」で揖斐駅に到着した。
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良い雰囲気の木造駅舎で、きっぷうりばと改札口の”ラッチ”も昔ながらのスタイル。券売機はシンフォニア製の簡易的なものが1台設置されている。
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窓口営業時間は始発列車発車前の5:27から最終列車発車時刻23:12までと手厚い営業体制。おそらく駅係員は泊まり勤務となっているのであろう。
次の発車は15:15。全列車大垣行で、日中時間帯は40分~50分ヘッドで運行されている。
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養老線といえば「サイクルトレイン」。平日は日中の時間帯のみだが、土休日は全列車が対象となる。
また、「養鉄トレクル」という乗り捨て可能なレンタサイクルがある。同線の揖斐駅と3つ先の池野駅、道の駅池田温泉の3箇所にサイクルステーションがあり、電子的な開錠システムを使った本格的なもの。
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揖斐川町が運行する”ふれあいバス”、”はなももバス”の案内が駅舎内に掲示されていた。なお、当駅には池田町のコミュニティバスも発着している。
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15:09、折り返しとなる下り列車が到着した。オレンジ色に塗られた元近鉄「ラビットカー」である。
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当駅は現在ホーム1面1線のシンプルな配線となっている。かつては貨物営業も行われ、広い構内に多数の線路が敷かれていた面影が残る。
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早速乗車する。乗客は10数人程度。スポーツサイクルを積み込んだサイクリストも数名乗車している。
15:15定時発車。揖斐-大垣間14.5kmに10駅があり、駅間距離は比較的短い。列車はストップアンドゴーを繰り返し、25分かけて終着駅大垣に到着する。
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大垣駅は東海道線、樽見鉄道樽見線との乗り換え駅。広い構内の南側に頭端式の養老鉄道ホームがあり、桑名方と揖斐方でスイッチバック形式の配線となっている。
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養老線で貨物営業が行われていた当時は東海道線と線路が繋がっていたが、現在は切れてしまっている。かつて貨物の受け渡しが行われていた線路は、草に覆われていて痛々しい。
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大垣~養老
15:46発上り桑名行に乗り換える。サンリオ某キャラクターの特別ラッピング編成だ。
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桑名に向けて定時発車。この編成は3両編成なので、1両当たりの乗客数はまばら。この列車も自転車を積み込んでいる乗客がいる。スタートから20年が経過した「サイクルトレイン」は、すっかり定着した感がある。
大垣を出てしばらくは先ほど通ってきた揖斐方面の線路と並走し、まるで複線区間のようである。
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次の西大垣は車庫併設駅。中線もある立派な構造だ。ここから大垣まで1駅のみ、入出庫のための列車が何本か設定されている。
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下り列車と行き違いを行い発車。出発信号機は灯色が2つしかない「二位式」にもかかわらず、橙色の「注意」を現示していることに気付いた。調べてみると、当線の最高速度は65km/hで、近鉄の注意現示の制限速度と同じため、緑色の「進行」が存在しないとのこと。
それにしても当線の列車はよく揺れる。”通り”、”高低”の軌道変位が目視でもはっきりわかるほどだ。ある利用者アンケート調査でも「電車がよく揺れるので、もう少し乗り心地を改善して下さい」との意見があがっている。
大外羽を発車すると、列車は右に大きくカーブしながら立派な高架線へと入っていく。河川改修に伴い高架化された区間で、途中の烏江は高架駅となっている。
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なお、全列車でワンマン運転が実施されており、最前部のドア付近には運賃箱が設置されている。全体の半数以上を占める無人駅では、降車時に乗車券・運賃をこの運賃箱に投入することになっているはずだが、全ドアが開いてしまうのでほとんど活用されていない様子。運転士も乗車券の所持をしっかりチェックしていない。これでは不正乗車を黙認しているのと同じではないだろうか。
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列車は、沿線観光上の中心駅、養老に到着する。ここで一旦下車する。
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養老の滝へ
目指す「養老の滝」は駅から程近い養老公園内にある。駅前から養老公園行のシャトルバスが発着している。養老町が運行する土日祝日限定の運賃無料のバスだ。
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16:20発の最終便に乗車する。乗客は筆者を含めて3名。
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バスは「こどもの国」を経由し、養老公園の入口に当たる「松風橋」まで行く。
5分ほどで到着。すでにこの時間、日が陰ってきているので、急いで滝を目指す。
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沿道には土産物店や飲食店が並ぶ観光地らしい雰囲気。時間も遅いため人影はまばら。
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途中から階段状の歩道となり、坂がきつくなる。
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松風橋から急ぎ足で15分ほどかかり、滝に到着。
落差はそれほどでもないが、さすが「日本の滝百選」に選ばれているだけあり、姿が非常に美しい滝だ。
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しばらく休憩ののち、来た道を戻る。下りは重力の助けもあるので楽ちんだ。
松風橋のバス停に戻る。17:00を過ぎているので、駅に向かうバスの便はもうない。
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徒歩で駅に向かうことにする。途中に「養老ランド」という遊園地があった。なつかしい昭和の遊園地といった風情。
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「岐阜県こどもの国」という、これまたレトロチックな施設がある。やがて県道を地下道でくぐると、駅は間近。駅前には郵便局がある。
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養老~桑名
駅に到着。改めて駅舎を眺めると堂々とした木造駅舎だ。1919年に建てられた古い駅舎で、和洋折衷の明治大正期の公共建築によく見られる様式。当駅は「中部の駅百選」にも選ばれている。
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当駅は終日駅係員が配置されている有人駅。昔ながらの改札口で集改札が行われる。駅舎の外には降車専用口がある。今でも使われることがあるのだろうか。
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次の桑名行は17:30発。発車時刻が近づくと改札が始まる。構内踏切を渡り2番線に向かう。ビニール屋根の通路上家がいかにも”近鉄”らしい。
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この駅はホーム2面3線で、駅舎から一番奥にある副本線は当駅折り返し列車のみ発着する。線路はご覧の通り、道床が”土化”している。
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枕木は順次コンクリート製の「PCマクラギ」に取り換えられている様子だが、腐食した木製枕木も数多く残っている。また、電車線設備では、全国的にも珍しくなった木柱(架線柱)が多用されていることも目立っている。
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養老線管理機構の「令和元年度 安全報告書」によると、2018年度にPCマクラギ化661本、コンクリート柱4本の設備投資を行ったとのこと。徐々に近代化が図られている。
先に下り大垣行の列車がやってきた。東急電鉄から移籍してきた”新鋭”7700系電車だ。
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しばらくして、上り桑名行が到着。こちらはおなじみ近鉄車。”新旧”両スターが並ぶ。
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終着桑名に到着したのは18:19。すっかり陽が落ちてしまっていた。
感想
今回は時間の都合上駆け足で巡ったが、機会があれば他の駅で途中下車するなどして、ゆっくりと旅をしたい路線である。
公有民営方式により新たなるスタートを切った養老鉄道。公的支援による鉄道の維持は”必然”であり、これからの地方ローカル線運営のスタンダードになってくるであろう。
その上で、今後はバス、タクシー、自転車といった、いわゆる”二次交通”との連携を強化することが課題。交通は”普遍性”が命である。利用者の視点に立って、交通モード間・事業者間の”カベ”を取り払う必要がある。
今回乗車した養老鉄道においても、まだまだ改善すべき点はあると思われる。今後の展開に期待したい。
関連リンク
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